2/15/1999 Renew   ホーム  インデックス

pin ジジイロッカーが悶絶するとき
<9/14/97 up>



pin 1994/5 気仙沼アマチュアバンド連盟会報より再録


エルビス・コステロの新譜が出た。通産15作目だという。あの生きのいい、皮肉屋で恐れを知らない若者のデビュ−作「マイ エイム イズ トゥル−」から早や17年が過ぎたのだ。40の声を聞いた男の最新作のタイトルは「ブル−タル ユ−ス」。(野蛮な若さ)とは感慨深いものがある。
ロックの永遠のテ−マのひとつに「決して大人になるな」というのがある。しかし、死んじゃった幸運かつ、才能のあった人たちを除いて、多くは確実に進む時間と格闘せねばならない。ロックバンドは老いという壁にぶちあたり、悶絶するのだ。
それはアマチュアバンドとて同じことだ。怒れる若者は子持ちとなり、顔には皺が刻まれる。会社の宴会では演歌も歌わねばならぬ。JCでは先輩を立て、商店街では跡取りの顔をする。市民運動会では親子三代リレ−に出ねばならぬ。「いい大人なんだから」。女房の声がだぶる。壁ぎわのエレキギタ−が泣いている‥‥。
 ヘビメタ爺さんを主人公にした名作漫画「ジジメタル・ジャケット」が描いた世界は図らずも21世紀の私たち自身に他ならない。
コステロの新譜は実にク−ルだ。が、驚くほど自由闊達な音がきらめいている。40男は若いとはいえまい。しかしそれなら、それでやりようがある。そのいい例をコステロの新譜にみる思いだ。若さとは詰まるところ幻想だ。だとしたら音楽ほど添い寝するのにふさわしい相手は、またなかろう。KABU(気仙沼アマチュアバンド連盟)の抱える高齢化という笑えぬ現実と、この幻想をどこでつなぎとめるかは、各人の精進としておこうか。

(佐藤 紀生)
ya1 馬鹿ミニ ya2

While My Guitar Gently Weeps / by The Beatles