pin小学生からやり直しても同じか?
(佐藤家の日常から12)
< 2/19/2000 up >
yoko
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お年玉であきが、プレステ版「人生ゲーム」を購入した

見栄っ張りと意地っ張りがDNAで複雑に絡み合う母娘2人は、容赦のない突っ張り合い合戦を繰り広げている。
お互い、女優だのアナウンサーだの、はては弁護士だの、これでもかとステータスの高い職業を選択。ゆーたが参加する場合もあったが、彼はいつも「学校の先生」とか「警官」。夢と欲の皮がパンパンに膨らんだ姉と母親に比べて、実に堅実で奥ゆかしいけど、父としては何か寂しい気もするぞ。
「人生ゲーム」最大の特徴は「仕返し」である。ボード版でもそうであったが、プレステ版は、その意地悪さ#(1)が際だっている。財産のぼったくり合いはもちろん、各人のパラメーターのぶんどり合いもある。そして、当然のごとくあきとガイは「仁義なき、仕返し合戦」へと、毎回突入するのである。勝てば勝ち誇り、負ければ地団駄踏む。勝ちは実力、負けは相手が卑怯だったから。これが彼女らの共通認識である。
ゲームでこれだもの、現実はもっと容赦のないバトルとなる。

ある日

「あんた。ピアノの発表会近いんだよ。練習してんの」
「してます」
「いや」
「してるってば」
「してません」
「してるの」
中略(この間、10分以上のバトルが続いたらしい)
「とにかく、中学生なんだから、することはちゃんとしなさい」
「中学生、中学生って、何なの」
「小学生じゃないんだから」
「当たり前でしょ。お母さんこそ、この間も通信簿の通信欄に間違った漢字を書いたじゃない。ちゃんとしてってば」
「あれは勘違いしたの。いつもはちゃんとしてます」
「してません。小学生からやり直せっつうの#(2)

ああ。売り言葉に買い言葉とはいえ、この「小学生からやり直せ」発言は、ガイの逆鱗に触れた。
指摘のあった国語とか、算数、あっ社会も、特に地理、そしてもちろん理科など学習面についてはまったくの暴言と断言できない一面の真実を孕んでいるだけに、この率直な指摘はガイの心をいたく、いたく傷つけたのは容易に想像できる。
それから3日間。ガイはあきの部活の送迎などを一切拒否。あきにも「言葉が過ぎた」という、若干の後ろめたさがあるものの、これまた強情に、謝罪しない。

明日はあきの14回目の誕生日という日。
「このままでは明日の誕生日プレゼントは望めない」という私の停戦勧告を、あきはしぶしぶ聞き入れ、ようやく型どおりの謝罪。冷戦は終結した。アグレッシブでたくましい娘を持つと、父もなにかと苦労するのであった。
ところでこの長い戦いのあいだのゆーたはというと、けんかする2人から距離を置き、ばーさん相手にトランプ#(3)をしているのである。君子危うきに近寄らず。彼の処世訓はみごとなのだが、やっぱり父はちょっと寂しいと思うのであった。

( のりお )

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あずみによる脚註
おや、こんかいはガイ母さんもコンプレックスを突かれたせいか、余裕がないな。でも、ガイのことだからつぎの反撃がどうなるか、楽しみかも。って人のことだと思ってわりいなあ。
1.) その意地悪さ:
私は昔、ガイと大貧民をやったことがあって、その容赦ない大富豪振りにも驚いたが、大貧民のときに虎視眈々と下克上をねらう鋭さに舌を巻いたぞ。
2.) 小学生からやり直せ:
いやあ、本音というのはポロッと出るんもんだけど、こらあいかにもまずいよなあ。のりおくんのりおくん、面白がってばかりいないで、たまにはコンプレックスということの意味なんかを、あきちゃんに教えて上げてね。
3.) ばーさん相手にトランプ:
しかし、このゆーたのマイペースぶりは、けっこう偉いぞ、もしかして大物かもしれんな。ばーさんとのトランプなら確実に勝てると踏んでやってるなら、将来は株関係とかギャンブラーとかがいいかも。



しかし、小学生からやり直しても、やっぱりガイはガイなんだろうな。