pinゆーたのミレニアムバレンタイン
(佐藤家の日常から13)
< 2/22/2000 up >
yoko
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ミレニアム・バレンタインデーの日

おれは女房とあきから普段飲んでいる安ワインの三倍の値段の高級ワイン(といっても3,465円、消費税込み)と、会社の女の子ご一同様から男性社員均一の義理チョコをいただいた。まあ既婚者たるもの、こんなものである。思いもかけない美人から、チョコをもらい、なにやら危険な香りが鼻腔をくすぐる —— なんてのに縁はない。
と、お父さんにとっては、いつもの2月14日だったのにもかかわらず、ゆーたの野郎は何と、生意気にも本命チョコをもらって、ルンルン気分で下校してきた。ばーさんの証言によると、その足取りは軽く、手に持った毛糸の帽子をぐるんぐるん回し、目は「おれは鉄兵」の#(1)、あの下弦三日月形に完ぺきに変形。紅潮した頬はゆるみ放しだったという。
それもそのはず、何と5人いるお気に入りガール▼の筆頭であるCちゃんから、チョコをもらったのだという。しかもだ、手作りのハートチョコで、ピンクで「LOVE」の文字が浮き出ているいるではないか!(お手製の箱はやや不格好だが、そこは小学4年生、ほほえましい)。さらにあろうことか「おいしいかどうか自信ないけど、食べてね」というハートマーク入りのラブレターまで同封されていたのだぞ。いいのか。
振り返れば、われわれの時代にはバレンタインデーなんぞはなかった#(2)。大学生の時に当時付き合っていた女の子(といっても“ゆん”#(3)なのが悲しい)からもらったのが最初だったと思う。女の子から、そんなスイートな方法で愛を告白されるなんざ、ついぞ経験がないぞ。それを10歳になりたてのヤローがこんなおいしい思いをしてもいいのか、おい!

ゆーたくん感想は

「おまえ、本命チョコもらったんだってな」
「まあね」
「一番、好きな子なんだってな」
「うんうん」
「食べたのか」
「もち」
「うまかったか」
「えへへ」
「ラブラブなのか」
「でへへ」

チクショー!覚えてろ。ぎぶみーちょこれえええと!
さてお姉ちゃんのバレンタインデーはというと、女友達同士で「それぞれが一番おいしいと思っている市販のチョコレート」#(4)を互いに交換し合ったという。弟がルンルン恋のバレンタインデーなのに、食欲の世界でしか物事を計れないあき、14歳の早春である。

( のりお )

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あずみによる脚註
のりおくんのりおくん、息子相手にそんなに逆上してはみっともないよ。でも、ゆーたはスポーツができるし性格もいいから、女の子に人気あるんだねえ。きみとまるで逆だねえ。ってことは、ガイ母さんそっくりなのか。なるほど、それなら肯けるぞ。ガイだって、後輩から山のようにチョコレート貰ってたもんな。
1.) 目は「おれは鉄兵」:
ちばてつやの学園もの。チビだけど気が強くスポーツ万能で喧嘩好きな、愛すべきイタズラ者鉄兵くんが、なにか悪だくみを思いついたとき、目が下弦の月になるんだったよね。
2.) われわれの時代にはバレンタインデーなんぞはなかった:
えっ?きみには無かったのかもしれないけど、おれにはあったぞ?そうか、可哀相な中学時代だったんだなあ。ああそうか、小学生の時にはなかったってことか?でもおれ、小学生の時ももらってたしなあ(ってここで見栄張ってどうする)
3.) ゆん:
ガイ母さんの友人で、むかし一時のりおくんと付き合っていたこともある。あまりからかうと祟る▼らしい。ゆーたと違って、のりおくんの交際範囲って結局はそういうところなんだよなあ。
4.) それぞれが一番おいしいと思っている市販のチョコレート:
いまは、コンビニでもスーパーでも山のようにチョコレートが売られているが、おれはやっぱり森永ハイクラウンが好きだな。いまも売ってるのだろうか。



しかし、ゆーたというヤツもおもしろいなあ。