いいから、これ見て
(佐藤家の日常から63)
● 仕事から帰ると、ガイが1枚のメモ紙を突きつけた
「いいから、これ見て」
気色ばむガイ。
何か悪事がバレたのか? と一瞬狼狽するが、ともかくメモを受け取った。
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「?」
「分かるっちゃ」
「はい?」
「だから、似顔絵。一発で答えて」
「何で?」
「ゆーたが似てないというから」
「誰に?」
「バカじゃないの。それ言ったら意味ないっちゃ」
「ヒントは?」
「ここまで似ているのに、ノーヒントで分からないかなあ」
「歴史上の人物?」
「日本髪にしているだけよ」
「時代劇の女優か、吉本新喜劇、意地悪ばあさん…」
「もう何て勘が悪い…じゃあ、特別にスペシャルヒント」
「…(特別もスペシャルも同じ意味じゃん)」
「歌手。ほらもう分かった!」
「歌手?」
「ねっ、早く言って」
ここまで来れば、どんなに似てなくとも、「いなかっぺ大将」のテーマを歌った、道頓堀の丸顔大物演歌歌手に違いないと分かる。
しかし似てないのに、そう答えるのは嫌だ —— と天の邪鬼のB型根性がむくむくと頭をもたげた。
「あっ!」
「ねえ、分かったっちゃ!」
「都はるみ」
「えっ! 何で? バカじゃないの。何でこの人が都はるみなの」
「違うのか(ぶっ! これはしばらく楽しめる)」
「全然、似てないじゃん」
「…(おずおずと)、じゃあ…美空ひばり?」
「…ねえ、マジ? ほら、丸い顔だよ。元気いっぱいの、いっぱいテレビでCMに出ているじゃん」
「うーむ…」
とここで、あることに気付く。おれには演歌歌手の知識が乏しい。
(石川さゆり…いくらなんでも「あああああっ 津軽海峡 冬景色ぃ」の人はなあ)
(八代亜紀…「しみじみ、呑めばぁ」って…トミー・リー・ジョーンズでもあるまいしなあ)
(欧陽菲菲…って演歌歌手か? サインはVだし、いかん混乱しとる (註:サインはVは范文雀))
(テレサ・テン…うわっ! 思考が脱線し始めた。おれが脱線すると戻るのに時間がかかる。困る、困る。黒柳徹子、歌手じゃないじゃん。中村玉緒、共通点、着物だけじゃん、あんみつ姫、漫画のキャラクターじゃん! えーと、えと、江戸、大奥、仲間由紀恵、結構好き、トリック・シリーズ続けてほしい…、いかん、いかん! 誰かいないか。誰ぞ、いないか…)
「うーーーーむ」
「もう、だめじゃん」
(おお、これはどうだ!)
「なーんだ!」
「やっと! 遅っ!」
「森昌子だ!」
さすがにここまで来ると、ガイはまさに堪忍袋の緒が切れたのだろう。憤然とオレの手からメモ紙をむしり取り、ぶっといサインペンのキャップを取ると、正解を書き込んだ。
それがこれ。
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いやあ。楽しかった!
「ほらこの輪郭、天童よしみしかありえない。愛嬌のある目の感じもまさに天童よしみ。髪型もものすごいヒントだし、こんなに特徴捕らえた私って、絵描きでもないのにすごい…うんうん。それが分からないあんだって、絵のセンスゼロだね」
確かに。でも「お互い様」なのである、ガイ。
( のりお )
▲あずみによる脚註
今回は全然なし。この似顔絵の前には脚註などありえんぞ。でもそれだけじゃくやしいので、彼女のオフィシャルホームページのトップから写真をもってきた。どうぞみなさんも比べて見て。
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もしかして、似ているかもしれない(^^)
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