pinガイおかあさんの貼り紙大作戦
(佐藤家の日常から64)
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ゆーたは高校三年生になった。



ひょんなことで入部した硬式野球の部活動をはじめ、勉学にいそしむ日々だ。まあ部活の方は、7番レフトで、弱小チームながらどうにかレギュラーを確保し、春季地方大会でも、得点につながるヒットを放つなど、そこそこ充実した毎日を送っている。結局は1勝2敗(敗者復活戦を含む)で、さわやかに散ったが、まあドンマイだ。
しかし勉学の方は、正直あんまり「いそしんで」いない(笑)進学クラスになったのだから、もう少し勉強しよう! ガイみたく「菅原(旧姓)、目を開けて寝るな!」と担任からいわれるような高校ライフだけはしないようにしてほしいぞ。うはは!

ところでもう一つ、ガイの遺伝子を受け継いだのが、姉のあきもそうだったように#1.、異常なほどの「忘れ物」癖だ。お姉ちゃんは死んでも忘れなかった弁当すら忘れる。まあお姉ちゃんは、通学カバンを忘れて下校したし、あなたの母ちゃんは、ランドセルを忘れて登校したのだから、血は争えんのう。
そんな佐藤家の伝統をきちんと踏襲する令息が、ついこないだも学校の尿検査を忘れた。ガイは「1,100円も掛かっているのに!」と大変な立腹ぶりだった。学校からの通知で、予備日があると聞いて、ホッと胸をなで下ろしたが。さあ、ガイの怒りは収まらない。そして「2度と忘れさせてはならじ!」と、まるで江戸城大奥のお局さまみたいに、まなじりをきりりと上げ、その対策に、やや古びてきた頭脳をフル回転させた。

ワインを飲み過ぎていたせいもあろうが、このことが佐藤家始まって以来の、忘れ物ゼロ大作戦へと発展したのであった。

ではご覧あれ!





ガイおかあさんの貼り紙大作戦


「女の子の生理のための予備日なのに、ゆーたのやつ」


書類




「絶対に忘れさせないからね」


カレンダー




そして26日の朝、目が覚めたゆーたの目に飛び込んできたのが・・・
部屋のドアの表裏に書かれた、大きな文字・・・そう


ドア1




「尿検査」
「ふっ、2枚も」



「トイレ、トイレ・・・えっ?」


2Fトイレ




「分かってるてば! 1階に検査キットがあるんだった。ハイハイ・・」


階段1




「眠いなあ」


階段2




「えっ! 何だよこれ!」


1Fdoor




「どんだけー!」


1Fトイレ




「台所への入り口にもかよ!、うわっ! しかもダブル!」


台所




「すると当然・・」


検査キット




「まっ、そうですよね。やります、やります」

「はい、やりましたよ」


「尿検査も終わったし、メシ、メシ…」


「うん?」


テーブル




「どんだけー! #2.
「母の日になんか、ぜってー何にもやりたくねー!」


「やばい!もうこんな時間、着替えないと」


「・・・・・」


茶の間




「持ったってば!」


バッグ




「入れたってば!」
「しつこいなあ、ホント」


「まさか」


玄関1




「ここまで」


玄関2




「ドアだけ・・もといどんだけー!」
「もう降参!」


玄関3




「えっ、何お父さん? 証拠写真撮る? お母さんに見せる? ふっ、ドンマイ、ゆーた」
「はいポーズ。じゃ行ってきます。お父さん、張り紙はがしておいてよ。じゃね」


玄関4




とここで選手交代。

「しかしガイもしつこいのう」
「まっ、メシでも食うか」
「うん?」


指令1




「確かに、どんだけー!(笑)」
「さてとおれも出勤せねば・・・うん?」


「これは!」


携帯1




「もしかして」


クリーム




「手指、かかと、潤って・お肌なめらかクリーム」


「ぢゃなくて!」
「まぎれもなく・・」


携帯2




「キターーーー!」
「ガイの不携帯電話!!!」#3.
「あんだけ、ゆーたに尿検査注意したのに!!」
「ぶははは!」
「よーし、ゆーたのためにも仇を討ってやるぞ!」
「その前に、まず証拠保存」


携帯3




「でもこれじゃ26日の不携帯電話との証拠には弱いなあ」
「そういやさっき地震あったとテレビ速報があったな。おう!よしよし。これならどうだ」


携帯4




「おお! 時間までバッチシだっ! 証拠保全しました!」
「では復讐をば!」
「復讐するは我にあり」


復習1




「復讐するは我にあり」


復習2




「復讐するは我にあり・・・どんだけー!」


復習3




「忘れないでね!しくしく・・・」


復習1




「これでよしと・・。じゃあおれも出勤!」


帰ったガイは

「こんなに笑ったの久しぶり!!」

ってご満悦かよ! さすがに忘れ物クイーンの母にして元祖!


「あっ、お父さん、今日忘れたでしょ」
「えっ?」


指令2




「しまった! わ、忘れてたっ!」




( のりお )

yoko
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あずみによる脚註
さすがガイおかあさん、やることが半端じゃないのねー。なんかわかんないけど、さすがロシアの血を引くだけのことはある<意味不明。
1.) 姉のあきもそうだったように:
あきちゃんの忘れ物伝説はいろいろあるけど、とりあえずあきの3年間を見てもらうといいかな。
2.) どんだけー!:
よくわからんが、2007年春現在、ちまたではやっていることば。もともと女子高生やおかまさん関係のひとが使い始めた、感嘆やあいづち、驚きなどを表す言葉らしい。ゆーたの学校は圧倒的に女子が多いからこういうのに敏感なのかな。にしても「どんだげ」と気仙沼弁になまってしまうと、意味がちがうような気もする。
3.) 「ガイの不携帯電話!!!」:
ガイかあさんがよく携帯を忘れるし、検診を忘れるってことについては▼急ブレーキで止めよ !でどーぞ。


 nyoukensa


これが、自分の検診を忘れないようにトイレに貼った紙ですね。これでももうちょっとで忘れるところだった経験があって、今回の大作戦が生まれたということっすね。


尿検査b1


これは検査の「検」が書けず、笑ってごまかしてるレア物件。


癌検査1


これは、尿検査のあとにあった大腸ガン検査のときのやつ、トイレットペーパーホルダーに貼るというのは一見効果ありそうだけど、それじゃ遅くないか?


のりおくん曰く「毎年、こんなもの撮っているおれって、どんだけー、とあらためて笑える」だそうです。それはそうかもしれないけど、このインパクトは、たしかに写真を撮っておきたくなるよなあ。




これだけ大量の写真だと、たしかに「どんだけー」という感じだったよ。