pinリラックマの伝説
(佐藤家の日常から83)
yoko
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佐藤家には「リラックマ」のぬいぐるみが2つある#1.


体長40センチほどの大きさで、2つとも、ゆーたがUFOキャッチャーで取った。2つには名前をつけている。1つは「ゴン吉」。それは最初にゆーたが取ったリラックマの「弟分」として、兄貴の名前をアレンジした。では兄貴の名前とは…。今回は、その由来のお話。

昨年の正月、あきがテレビのクイズ番組に出た#2.。関西のテレビ局から全国放送しているもので、35年の歴史を誇り、視聴者参加型クイズ番組として唯一、全国放送されている。いいのか? そんな由緒ある番組に、佐藤家のすっとこどっこい娘が出て…。家族みんなで楽しみにしながらも、私は大いなる不安を覚えた。そしてそれは、やはり的中するのであった。まるで「お約束」のように。

会社の先輩と2人で出場。その番組は通常、解答席は1人で、4人で競う。お正月最初の放送だけ特別バージョンで、2人1組で、4組が挑戦した。
パネルを取り合う形式で、クイズの解答以上に、どのパネルを取るか ── という戦略も勝敗を分ける#3.。ガイはトコ姉ちゃんとヒロシ兄さんとともにスタジオで応援したが、その結果についてガイから「だめだぁ。問題聞いてない」というメールがあった。うーむ、やっぱり天然ぼけ爆弾が炸裂したのか! と残念におもいつつも「何かをやらかしたらしい」と察知し、不安を抱えつつ、楽しみに放送を待った。

放送が始まった。
まずは自己紹介。「牛タンかつ、フカヒレでアタックチャンス! 」
頑張れ!

1問目は、他の組が正解。
2問目。「大相撲1月場所で、新大関として土俵を踏むモンゴル出身の力士の新しいしこ名は? 」
あきがボタンを勢い良く押し、「日馬富士」▼
おお正解! 幸先いいじゃん!
3問目。会社のN先輩が正解! 2問連続。2人はガッポーズ。
左からヒロシ兄さん、トコ姉ちゃん、ガイが一瞬映る。ガイも笑顔ながら、少々心配げな顔。

4、5問目は他の組が正解後の6問目、アナグラムの問題。
「甥の小物」。あきとN先輩2人同時に「小野小町」不正解。N先輩は落ち着いて見えるが、どうやら少々そそっかしいのかも。正解はもちろん「小野妹子」。不正解すると「お立ち」と言って、以降、2問解答権がなくなる。
ああ、いい具合で攻めていたのになあ…。
7、8問目、他の組正解。
解答権復活した9問目は音楽当てクイズ。曲が流れ、歌っているアーティストの頭文字を3つつなげる問題。ほとんど同時にボタンを押すが、あきがタッチの差で制した。
10問目、他の組ゲット。
11問目、「野球の関西独リーグで男子とともにプレーする国内初の女子…」。あきが素早く反応。「吉田えりさん」正解。
むむむ、あき意外と頑張っているなあ。イケイケドンドン!
気分も高揚して迎えた12問目!
このクイズの特徴であるパネル画面に4つある角を取るチャンスが訪れた盤のヤマ場だ。

こっからは実況風。

司会Kさん「次の問題です」
美声の女性ナレーター。「石原和三郎作詞の童謡、花咲かじじいの歌詞に登場する犬の名前はなんでしょう? 」
すぐに「ポチ」という正解が出ると思っていた司会のKさんが「うん? 」と首を傾げるような声。解答時間が半分を超え残り3秒ほどになったところで、あきがボタンを押した。司会のKさん、ほっとした感じで、あきに解答を促す。正解を信じている雰囲気がひしひしと伝わる。あきが答える。

「ゴンゾウ」

会場全体が一瞬あっけにとられ、次にどよめくというか、かすかに吹き出している人もいるような雰囲気に覆い被さるように「ブー」という不正解のチャイム。会場は一気に笑い声に包まれる。崩れ落ちるあき。苦笑するN先輩。「あんまり難しく考えないように」との司会のKさんも含み笑いだ。

後日談として、あきに聞いた話では、放送ではカットされたが、この「ゴンゾウ」解答の前の2問、どのチームも時間内に答えが出なかった。問題自身はそんなに難しくなかったが、何となく引っかけ問題ぽかったので、4チーム牽制し合ったようだ。
そこで、あき以外の皆さんの頭には「ポチ」とい名前が浮かんでいたのであろうが、「いいのか? そんな簡単な答えで」と躊躇する中、あきがいきなり場外大ファールを打ってしまった。
しかしどこから出たんだ? よりによって「ここ掘れワンワン」のかわいらしい忠犬ポチが、ゴンゾウ。花咲かじいさんの名前が花咲権蔵#4.なら理解できなくもないが…(笑)

痛恨のミスで、2度目のお立ち。「ほかの組は1回も立っていませんが、勝つ組は勝ちますから」と司会Kさんのフォローもむなしい。
13問〜23問。各チーム一進一退の攻防。N先輩の活躍もあり、あきのチームが盛り返し、やや有利なまま終盤へ。
ここで「アタックチャ〜ンス! 」おお、ついに来た。勝負の分かれ目の24問目。「新型インフルエンザの流行、ある感染症が世界的に流行することを英語で何と言うでしょう」
N先輩「パンデミック」正解! 。隅のゲットに乗り出す。

運命の25問目。「全国農業協同組合中央会が展開するキャンペーン、朝ご飯大使に任命された女性タレントは誰でしょう? 」。
あきが解答「優香さん」。ああ勘違い! 痛恨の不正解 (正解はスザンヌ) で、肝心要の時に3度目のお立ち。
万事窮すか? と見ていて、あきらめかけた。
解答権復活して28問目。「江戸時代の地理学者」を当てる。あき「伊能忠敬さん」。
なぜか歴史上の人物にも「さん」付け(^^);で正解。これが起死回生の1手となった。ずるずる負けるところを、徳俵で持ちこたえた。これをきっかけに角をゲットするなどし、わずか1問の差で、なんと優勝!

3回も罰として「お立ち」をし、アタックチャンスもつぶしながらも勝利。司会者Kさんにも強い印象を残した#5.、お騒がせチームとなった(^^);

そして、ヨーロッパ旅行をかけた最終問題。
問題は、川の名前を当てるもの。ゲットしたパネルのところは映像が見ることができる。テレビで見ていて、おお! アブシンデル神殿がはっきり見える。これなら正解できる! と思った。
後日談でも、この映像で2人は「ナイル川」という正解を導きだしていた。
しかし最終ヒントとして「○○○に死す」という本の映像。これに、2人はミスリードされてしまう。
2人の答えは「ベニス」。

どっか〜ん!
ガイのメールにあった「あき、問題聞いていない」というのはこのことだったのだろうか? 「問題は『川の名前は? 』」。ベニス川はない。2人とも若いのでアガサ・クリスティの「ナイルに死す」#6.を知らなかったのだな。
こうして10中8、9手中にしかけた豪華ヨーロッパ旅行は、するりと、その手から滑り落ちたのだった。

まあそれにしても、ジェットコースターよろしく乱高下しながら、優勝したのだから、あきらしい#6.。頼りがいのある先輩にも恵まれた。よしとしたい。
ということで、あきはしばらく社内で「ゴンゾウ」と呼ばれたとか、呼ばれなかったとか…(^^);
そして、佐藤家のリラックマのお兄さんの名前は、テレビ放送後、「ゴンゾウ」と呼ばれることになったのであった。


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佐藤家の居間で記念撮影。左が「ごん吉」、右が兄の「ゴンゾウ」
ゴンゾウが突っ込みでゴン吉がぼけなのか。逆かとおもったよ。


( のりお )

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あずみによる脚註
せっかくだから、ヨーロッパ旅行してくればよかったのにねー。残念でした。

1.) 「リラックマ」のぬいぐるみが2つある:
あきちゃんもゆーたもいなくなった佐藤家に加わった、家族みたいなもんか。話のネタを提供してくれるともっといいのにね。
2.) あきがテレビのクイズ番組に出た:
分からない人はいないと思うけど、児玉清さん司会の伝説的なクイズ番組「パネルクイズ アタック25」▼。制作は大阪朝日放送。
3.) どのパネルを取るか ── という戦略も勝敗を分ける:
番組の知名度はとても高いけど、ルールを知ってる人は意外に少ないかも。詳しくはこちら▼でどーぞ。
4.) 花咲かじいさんの名前が花咲権蔵:
いや、権蔵だと悪いじいさんのほうになっちゃうよー。
5.) 司会者Kさんにも強い印象を残した:
うちの子どもたちにも、あきちゃんゴンゾウっておかしいよねー。と深い印象を残していますから(^^)
6.) アガサ・クリスティの「ナイルに死す」:
どの表紙▼がでたんだろう。わたしにとっては文庫の表紙が一番なじみ深いが。それよりも、この場合「ナイルに死す」を知らないと云うより、あのルキノ・ヴィスコンティの名作映画「ベニスに死す」があまりにも有名だったということかもねー。単純に引っかかっちゃったとも云える(^^)
7.) 乱高下しながら、優勝したのだから、あきらしい:
あきちゃんは、受験勉強に限らず、いつだってクイズで勉強してたもんな。しかも佐藤家は、面白い誤答には事欠かないし。詳しくは姉弟クイズ合戦▼他を参照してね。でもって、姉弟クイズ合戦で云ってたオヤジの夢ってのは、実はこれのことだったのですねー。




あの番組にでるだけでも凄いのにねー。優勝するだけでも凄いのにねー。
きっちり笑いを取ってくるあたり、やはりタダモノではないぞ、あきちゃん。