pin百点満点のジャンプ
(佐藤家の日常から8)
< 7/17/99 up >
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あきが国語の期末テストで100点を取る

しかも学年でたった1人だけという。
もう、帰って来た時から、鼻高々で「いかに私が国語担当の教頭先生から過分なお褒めの言葉をいただいたか」を弾丸のような早口で家族にまくし立てた。
いつもは宿敵であるとはいえ娘の快挙である。ガイも大いに喜んだ。
とは、仕事から帰ってガイから聞いた話である。
あきは素直に喜びを爆発させたそうで、そのあまりにも素直な爆発ぶりはというと・・・。

「よかったね。あき」
「お母さん。100点だよ。学年でたった1人なんだよ。もっと喜んでよ」
「ばんざーい。あきちゃん、ばんざーい」
「なんか心がこもってない。やったー!って感じがしない」
「やったー!・・・これでいい?(とガッツポーズ)」
「ううん。こう(といってジャンプする)やったー!でしょ」
「(しぶしぶジャンプして)やったー!こう?」
「もう一回。やったー!」
「やったー!」
母の誠意のないジャンプに厳しく注文を付けたあきは、向き直り
「ゆーたは?」
「えっ?なんで?」
「いいの。いいから、ジャンプして。やったー!」
「・・・・やった」
「うんもう。いい・・・。次、おばあちゃんも。せーの、やったー!」
「おばあちゃんは、腰が痛いからだめでしょ」
と、口を挟む母など問題にせず
「ぴょんってして。おばあちゃん。ぴょんでいいから。やったー!って」
「(ぴょん)やったー!」
「ありがとう。おばあちゃん。心がこもってるって感じ」

その後、あきは数年前に軽い脳梗塞で足にやや後遺症の残るじーさんにまでジャンプを強要したという。恐るべし。
「明日の夕御飯はグラタンね」
とジャンプまで家族全員に強いた割には、チープなご褒美をガイに要求し、嵐のようにハイテンションのまま眠りについた。

飲み会のため難を逃れた私は、翌日、あきからジャンプを要求されたが、まだしていない。その代わり、なぜか「ポンズダブルホワイト」を人の数倍日焼けしやすい娘のために、買ってやるという話が勝手に進行している。
ジャンプするのは金がかからない—— 。心が揺れる父である。#(1) どうしようかなあ・・・そうだ・・・あきの国語力といえばこんな事があったぞ、悩みながら昔のことを思い出してしまった。

栴檀は双葉より芳し

あきが3歳になりたてのころ、はしかに罹った。3日ほど食欲もなかったが、やっと回復。ばーさんがバナナを与えた。
それを受け取ったあきは
「おいしそう」と一言。
食べて
「おいしい」とニコニコ。
食べ終えて
「おいしかった」とよだれを拭った。
未来形、現在形、過去形をきちんと使い分けた孫に
「おお、この子は天才だ」とばーさんは感激したそうな。
さすがは私の子供である。

夕飯をガーッと食べまくり、茶碗に白湯を入れ、すすりながら
「いただきました」などと日本語の用法用例、過去形未来形もごっちゃにしてしまう(でも何となくいいような気もするところが恐ろしい#(2) )母親とは大きな違いだ。
今回のご褒美は「ポンズダブルホワイト」の代りに、バナナにしてくれないかな。
そうだ、バナナといえばこんなこともあった。

食い意地で解く問題

あきが先日、期末テストで不得意の数学を「教えてほしい」と言うので、渋々付き合った。不等式の応用問題で、難しいというほどではないが、あきは「考えるより、教えてもらおう」という安易な姿勢が見え見えだ。こんなところは母親にそっくりである。
問題は簡単で、#(3)

1本50円の鉛筆と1本150円のボールペンを合わせて25本購入し、しかも3000円の所持金から少なくとも500円は残るようにしたい。なるべくボールペンを多く購入したいが何本買えるかというもの。

一応、式と答えをノートに書いて説明したが、あきはまだ完全に理解できていない様子だった。
そこで昔からよくやったように、鉛筆の代わりにバナナ、ボールペンの代わり にメロンで考えさせると、ありゃま不思議。すぐに答えがすらすら。
はた!つまりあきの原動力は食い意地なのだ。デリシャス三段階活用も、単に食い意地が張っていたからなのだ。うーん。やはり私の遺伝子より母親の遺伝子が強い。

「お母さん。うどんに入っている鶏肉、ゆーたが5個なのに、私のは4個しかないよ」
と怒る中学2年生は今日も元気だ。

( のりお )

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あずみによる脚註
おお、国語で100点とるとはえらいぞあき。父母はおろかでも、きみは頭はいいんだな。ということで、蛇足を少々。
1.) 心が揺れる父:
生活の要素を、全てCDを中心に考えるのりおくんにとって、0.8cd(CD換算で0.8枚分のお金)の支出は痛いと云うことですな。飲み会はOKでも子供へのご褒美はケチるのりおくんではあった。(7/21 追補:その後やはり、ガイは特売で1480円のポンズ・ダブルホワイトを買ってきたそうな。しかも、チャッカリ自分の分まで買ってきやがったと、泣くのりおくんであった)
2.) 「いただきました」:
人生は気合いだ!(c)アニマル浜口、を全面に出して生きるガイにとって、文法のあやまりなど小さな事で、その気合で簡単にクリアしていくのですね。
3.) 問題は簡単:
なんだその問題は!!実生活に置いてはあり得ないぞ。いままでそう云う事態に一回もあってないぞ。背景のない無意味な問題だな。
例えば、A君ちは貧乏で子沢山、家族が25人います。たまたま3000円の副収入があったお姉ちゃんは、ブラビのCDを買う500円を除いて家族全員に果物のおみやげを買っていくことにしました。みんなに大好きな150円のプリンスメロンを1個づつ買って上げたいのですが、残念ながらお金が足りません。足りない分は1個50円のバナナで我慢してもらうことにします。さて、何人がプリンスメロンを食べられるでしょうか。
これなら、可哀想な背景があっておれなら気合いはいるかな。でも、メロンなら切って半分づつ喰えばいいとか云う奴がいそうだなあ・・。
えっ、答えはって?ま、自分でやってみてね(逃げたらしい)



数学と聞いただけで頭いたいぞ