2/15/1999 Renew   ホーム  インデックス

pin 珍味セットの初心
<6/28/98 up>




先日、気仙沼に帰郷した時、かつて在籍したケーブルテレビ会社の後輩にこう言われた。「今でも年末には、珍味セットが配られます」。全身?マーク状態の私。思い出すのにしばらくかかった。
今から15年前、創業当時の会社は経営に四苦八苦。12月のある日、社長は全員を集めて、こう言った。「倉庫にあるやつ、1個ずつ持ち帰ってね」。行ってみると、倉庫の隅に、役員が経営する水産会社の目玉商品“海の幸珍味6点セット”が山積みされていた。「お歳暮?」とつぶやく同僚Aに、同僚Bがため息交じりで答えた。「ボーナスだってさ」。手取り10万円すれすれの安月給の上、ボーナスが珍味セット!しばし呆然。同僚Cなどは、夜食にしようと早速、封を切ろうとしている。情けないやら、悔しいやら。思わず叫んだ。「手を出すな!」。
残業代3分の2カットでも、若くて、その仕事が好きだから徹夜もした。しかしいくら何でもボーナスが珍味では納得いかん!社長が金策に奔走しているのは知っていたが、詰め寄った。2日後、社長は役員に掛け合い、ようやく半月分のボーナスを工面してくれた。
そんな会社も今や健全経営。「初心を忘れるな」と、数年前から珍味セットが、お歳暮として社員に配られているという。4年いたその会社を去って10年余り。極貧時代が遠くなったのを喜ぶとともに、残って会社を盛り立てた後輩に少々後ろめたさを感じた。
不況風が厳しい中、夏のボーナス闘争が真っ盛りだ。頑張れ、全国の労働者諸君!

(佐藤 紀生)
ya1 馬鹿ミニ ya2

Band On The Run / by Paul Mactertny & Wings<