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pin イエーの系譜




Vサインを出して、何と言いますか —— 。そこら辺の十数人に聞きました。
「ピース」は年配者。他の多くは「イエー」というこたえであった。
 「オス」とか「うっふん」とか「アチョー」とか「ご無体な」などの少数派はこの際無視するとして、今やこの「イエー」が主流だ。
 取材先でガキどもにカメラを向ける。「こっち見て」「イエー」「あっち向いて」「イエー」「ハウスを日本語で言うと」「イエー」というありさまだ。いやはや。
「イエー」はYEAH。YESの俗語と英和辞典にはある。この言葉が大々的に日本に登場したのは、1964年の映画「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」だと思う。この時は「イエー」ではなく「ヤァ」だった。意味的には日本語の「やあ」も「YEAH」も似たようなもんだし、原題「ア・ハード・デイズ・ナイト」を翻訳する際、彼らの大ヒット曲「シー・ラブズ・ユー」で印象的な“YEAH YEAH YEAH”をくっつけ、ビートルズ時代到来をしゃれのめして意訳したんだろうな。
わたしは中学になってからビートルズを知った。1971年だから7年も後のことだ。来日時に飛行機のタラップでJALの用意した法被を来た4人がニコニコと手を振っている光景とだぶり、何となくビートルズが「やあ、やあ、やあ」と気軽に挨拶しているように感じたもんだ。
「ヤァ」が「イエー」に変化したのは昭和40年代前半に話題を集めたレナウンのCM「イエイエ娘」ではないかと思う。その後はロックコンサートなどを通じて浸透。民放お昼の長寿番組(笑)の出だし部分で司会のタモリが観客に対して「イエー」を乱発して市民権を得たとにらんでいる。
 その間には「分かるかな、分かんねーだろうな」とシュビダバ芸風で一世を風靡した「今や完全に忘れ去られた芸人1」(と持って回って書くのは私自身も記憶から消えているからで、実にスマン)がジャズミュージシャン風に「イエー」を効果的に使っていたりしたな。(註1.)
今さら外来語の侵略を嘆いても仕方ない。「ハーイ」「オー」「ワー」。いずれも英語の「HI」「OH」「WAO」と似ている。感嘆詞なんてそんなもんだ。嫌なら「エイエイオー」にでもするか。だれもしないって、オーイエー。

(佐藤 紀生)



註1.:今や完全に忘れ去られた芸人1
・松鶴家千とせだったかな。いまでも立派な現役で、あの意味不明ながらもおかしい芸風は変わっていません。ただ、どうやらビートたけしの師匠だって言い張ってるらしい。本当のところは本人しか知らないだろうけど。(この項、あずみ)
ya1 馬鹿ミニ ya2

Cheated Hearts / by Yeah Yeah Yeahs