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pin 流石茶を飲もう!
<さすがちゃ *1>




ダセキ。唾石と書く。唾液腺にできるカルシウム結石のことで、これが唾の出口を塞ぐと、さあお立ち会い!唾液腺が面白いように膨らんでくる。細菌に感染して耳下腺がプクッとなったのが俗に言う「おたふく風邪」だけど、私の場合は右の顎下(がっか)腺。名前の通りあごの下、リンパ腺のちょいと前にあり、膨らむと右側だけが二重あごになるという、実に見栄えが悪い状態と相成る。「天につばし過ぎた罰」と笑った会社の同僚。反論できないのが悲しい。ペッ!
飯を食うと一気にパンパンだ。パンを食ってもパンパン。これが実に痛い。レモンや梅干しなどを想像すると、時としてツーンという痛みを感じるでしょ。あれは唾液がドバッと出て、一時的に唾液腺の容量をオーバーするためだと思うけど、石でせき止められているため、痛みがツィィーンとエスカレートするのだ。「パブロフの犬」の実験を、痛いほど実感できるぞ。
 実は十五年ほど前にも一度できた。その時、口の中を切開して取り出した石は、まるで干からびた米粒。色もやや黄色みを帯びた白。‥‥飯を食って、つばが出て、米粒状の石ができる —— 。ああ伊達六十二万石の水呑百姓の末裔(たぶん)として、禄高たった“一石”。安サラリーマンにはふさわしい病気ではないか。

ところで世の中には、魚のイシモチならぬ石持ちは多い。代表的なのは胆石。時代劇で妙齢の女性が「持病の癪(しゃく)が…」と路傍でうずくまる —— というのは胆石症の疼痛発作だという。その後は、通りすがりの浪人が介抱する —— 。懇(ねんご)ろになる —— 。ファイト一発!。実に小癪じゃあないか。それにしても「癪」という字。病だれに「積もる」とは出来過ぎだ。
 昔は感染症や寄生虫が原因でできるビリルビン結石が多かったが、今はコレステロール結石が主流で、男性の石持ちはぐんと増えた。私はどうも石持ち体質らしい。ポリープはあるから、かなりの確率で胆石もあるのだろう。ポリープは石があるとがん化の恐れがあるそうで、そう思うとますます癪に触る。
腎臓(じんぞう)から尿道までを含めた尿路結石は成人の二十五人に一人はあるというから、国民病ではないか。調べてみたが、石ができる臓器は意外と多い。前立腺にもできる。肝臓にもできる。膵臓にも。食道にできると砂肝になる。稀だが、肺にも肺胞微石症というのがある。胃にもできるのには驚いた。胃潰瘍の手術の後、胃の機能が低下した場合や、若い女性がストレスなどから髪の毛を食べるという異食などの場合、毛髪胃石というのができるらしい。髪の毛の不自由なやつに移植したいくらいだ。
 直腸にはひどい便秘などで糞石というのができるそうだが、こんな石は特に願い下げだな。頑固な便秘だと少々の浣腸ではうんともすんとも言わないそうで、指で掻き出すんだそうだ。近い将来、私が胆石治療のエースとして予言しているバイオフンコロガシ2号の活躍の場はまだまだありそうだ。
非科学的なバカな友人は「チン○にできたらいいのに」と、実にサイエンスの何たるかを知らないバカなことを言っていたが、皮膚にできる石はない。歯に歯石はできるが、皮膚にはタコしかできないということを、この友人はタコだから理解できない。あんまり私が「バカだ、バカだ」というもんだから奴の耳にはタコができた。ついでにグレてならず者(ローリング・ストーンズ)になった。くだらないギャグで目まいが起きた。そりゃあ耳石の成せるわざだ。ああ止まらない。
 確かにチン○に硬いしこりがある場合があるが、これは使い過ぎによるタコではなく、多くは血管が炎症を起こした後遺症の結節で、そうでなければがんだ。
結石の多くの主成分はカルシウムやリン。従って色は白が主体だ。胆石には黒色石と言われるような色違いのもあるが、残念ながら金剛石とか御影石、真珠とかはできない。もしおれの唾石が宝石だったら、少々痛いのも許してやるんだけどね。
 そうそう。脳にも石ができる場合がある。酒の飲み過ぎでアルコール結石というのができる…って、そんなわけはない。それは俗に言う石頭で、大脳新皮質が石部金吉となる。年を取ると多くの人が罹る。最近は他人の価値観など全く認めない創造力、想像力ゼロの若年性石頭症候群(ブロック・ヘッズ)も多いし、日本中、イシモチだらけで実に結構な話だな。うははは。

(佐藤 紀生)



註1.:流石茶
・胆石をはじめ、体内の石を溶かすという触込みで最近人気急上昇中の謎の健康茶。煎じて飲む点は漢方の薬みたいだが、例によって効能は謎だし値段もお茶としたら異常に高い。
しかし、胆石持ちのうちの親父や妹はせっせと飲んでいるらしい。あんな不味そうなものをよく飲むね。(この項、あずみ)
ya1 馬鹿ミニ ya2

Rock With You / by Michael Jackson