2/24/2001 up   ホーム  インデックス

pin カラータイマー




人間の設計図であるヒトゲノム(人の全遺伝情報)の解読がほぼ終了したという。
病気に関連した遺伝子を特定できれば予防、治療の研究が加速。医療の進歩に与える影響は図りしれない。寿命まで左右する遺伝子。配列を見れば将来糖尿病になる確率まで分かるというから嫌になる。致命的な病も予想できるので、既にプライバシー保護問題が表面化している。
確かに予防に役立つとはいえ「40歳までに胃がんになる確率57%。50歳 までの生存率35%。後は野となれ山となれ」なんてデータはあまり知りたくないし、もちろん他人にも知られたくない。
情報をこっそり入手した女房が生命保険掛け金を大幅アップ —— なんてのも困る。お返しにと女房のデータを見る。「象が踏んでも壊れない率97%、百人乗っても大丈夫率93%」(註1.)。納得しそうで怖いなあ。

ちょっとだけ将来の話 ——。
遺伝情報を組み込んだ体内埋め込み型健康管理装置「寿ゲム・マシーン」が開発される。過去の健診データももちろん、脈拍や血圧などのリアルタイムのバイタルデータの測定、定期的に採血検査もできる夢の機器だ。胸に付けた姿は、かのウルトラマンのカラータイマーにそっくり(註2.)。確かに寿命を管理するタイマーと言えなくもない。いくら何でも、余命たった3分ではこまるけど‥‥。
仕事で部下のミスにイライラ‥‥。途端にお父さんの胸の装置が「ピコーン、ピコーン」とゆっくり黄色の点滅を始めた。「いかん、いかん」。常備薬の精神安定剤を飲み込む。血圧が正常に戻った。よしよしと。
それでも仕事ではどうしても溜まるストレス。その解消にはやっぱり居酒屋で一杯でしょ。飲んで、食べてセクハラすれば元気百倍。調子に乗ってお銚子を追加しようとしたら、今度はせわしなく点滅。「ピコン、ピコン」。音声認知システムも盛り込まれているのだ。「うわっ、やばい」と慌ててキャンセル。
「帰れということだな‥‥」と、店を出ようと席を立つ。ふと視線を感じて振り返る。カウンターには妙齢の女性。潤んだ色っぽい流し目にどっきり。青に戻ったはずのカラータイマーが、今度は勢い良く赤の点滅を始める。「ピコピコピコ」。人生の危機!‥‥でも。ふと考えるお父さん。
—— さて、どうしたものだろうか?

(佐藤 紀生)

註1.:「象が踏んでも壊れない率97%、百人乗っても大丈夫率93%」
・サンスター文具のアーム筆入と、稲葉製作所のイナバ物置だね。どっちもCMが有名。
註2.:ウルトラマンのカラータイマーにそっくり
・まあ、そういうのがいいという人もいるだろうけど、おれなら視野内に命の残量がデジタル表示されるとかいうインテリジェントなのがいいな。酒を飲むとカウントが急激に廻り、身体にいいことをするとカウントの進みが遅くなるってのどう?健康オタクに受けるかも。(この項:あずみ)
ya1 馬鹿ミニ ya2

Throw Down the Sword / by Wishbone Ash