12/11/2001 up   ホーム  インデックス

pin オール・シングス・マスト・パス



ジョージ

12月8日はジョンの21回目の命日。今年はジョージの死という新たな悲しみとともに迎えることになった。ジョンの命日には必ず、彼の残した曲を聴く。今日はジョージの遺作を加えよう(註1.)
ジョージ・ハリスン。ビートルズのリードギタリスト。ジョンとポールという2人の天才の合間で、影が薄いという印象を持つ人も多いだろう。だが、的確でタフなギターワーク、難しいパートを見事にこなしたハーモニーなど、ビートルマジックを大きく支えた点を見逃してはならない。さらに12弦ギターやインド音楽など常に新たな音をグループにもたらし、活性化させた。
とかくギターの腕については中傷まがいの評を受けたが、デビュー当時のエレキギターの性能や録音技術を考えると不当に感じる。人気が爆発してからは、あの絶叫の中でのステージだ。そんなこんなで「下手」という烙印を押されたのでは、ファンとして切ない限りだ。
なぜならば、2枚目のアルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』収録のカバー曲「ティル・ゼア・ワズ・ユー」での艶やかでオリジナリティー溢れるアコスティック・ギターの演奏を聴けば、ジョージの腕前がいかに秀でていたかが分かる。
さらに、リミックスされた『イエロー・サブマリン・ソングトラック』での「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ」のギターの音色に驚いた。架空バンドという設定にふさわしい、白昼夢のような不可思議な音色が聴ける。リマスター前の音は、テープのダビングを重ね4トラックに押し込んだため(註2.)、本来の音とはほど遠い音になっていたのだ。「これがジョージの出していた本当の音なんだ」と目からうろこが数十枚落ちた。
曲作りの方は徐々に進化していった。初期は「イフ・アイ・ニード・サムワン」(ラバー・ソウル収録)が傑出している程度だが、その後は「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウイープス」(ホワイトアルバム収録)、「イッツ・オール・トゥー・マッチ」(イエローサブマリン収録)と独特の分野を切り開いていく。
そしてフランク・シナトラをして「史上最高のラブソング」と言わしめた曲「サムシング」(アビー・ロード収録)。シナトラは「最も好きなレノン・マッカートニーソング」と紹介していたが、実はジョージの作品。ジョージはシナトラの誤解に怒るでもなく、逆にシナトラが勝手に変えた歌詞を面白がり、自らのステージで歌うなど、ユーモアでこたえていた。
ビートルズ解散後、発表した『オール・シングス・マスト・パス』が彼の最高傑作となった。2作目の『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』とともに、不思議な温かみを持つ変テコなメロディーのオンパレードで、やはりジョン、ポール、ジョージ、リンゴの4人がいて、あの魔法のような素晴らしい200曲余りが生まれたと再認識できる。『オール・シングス・マスト・パス』については今年リマスター作が出たばかり。ぜひ触れてほしい音世界だ。享年58歳。もうジョージのギターは泣かない(註3.)。寂しい。安らかに。

(佐藤 紀生)



註1.:今日はジョージの遺作を加えよう
・元ビートルズのメンバーで、ソロアーティストとしても活躍したジョージ・ハリスンは、2001年11月30日、58才で没した。直接的な死因は脳腫瘍と云うことだが、咽のガンから肺などにも転移していて、今年春には手術もしている。長く闘病を続けてきた結果ついに、ということのようだ。合掌。

註2.:テープのダビングを重ね4トラックに押し込んだため
・いわゆるピンポン。当時は4トラックのレコーダーしかなかったため、4つのトラックの中の任意のトラックを一旦一つのトラックにまとめ、それをさらにミックスするというもので、当時にしては実験的な手法だったろうが、窮余の一策とも云える。ダビングを重ねるため、音質音圧とも落ちるし、ステレオでバランスを取るのは困難を極めたろう。というか、バランスが取れていないんだけど。

註3.:もうジョージのギターは泣かない
・いうまでもなく、"While My Guitar Gently Weeps" (そして、ぼくのギターは靜かに泣く) からですね。(以上:あずみ)
ya1 馬鹿ミニ ya2

All Things Must Pass / by George Harrison