1/3/2002 up   ホーム  インデックス

pin イマジンに込めた思い




昨年最大のニュースはやはり米同時多発テロだった。テロへの怒りは当然だが、やりきれないこともあった。ジョン・レノンの「イマジン」が湾岸戦争時に次いでラジオ放送自粛リストに載ったことだ。しかし人々からのリクエストは相次いだ(註1.)
「想像してみよう 国なんかないと さほど難しいことじゃないさ 殺したり、死んだりする理由もなく 宗教もない」
憎しみが憎しみを生む。その連鎖を断ち切るのは難しいだろう。でも可能性を捨てたら、すべては終わる。「イマジン」に込めたジョンの思いは単なる「夢追い人」のたわ言ではないはずだ。
アメリカでは国威宣揚とも言えるCDが爆発的に売れ、有名音楽家はこぞって慈善コンサートに駆けつけた。ライブ盤も多数出されている。その中で心を一番打ったのはニール・ヤングが歌った「イマジン」だった。「ヒーローたちにささげる」と題した米テレビ四大ネットワークが手を結んだ特別番組のスタジオライブCD(註2.)に収録されている。
ニールがこの曲を選んだこと自体に感動した(註3.)。彼にしか出せない切々と胸に響くボーカルは、イマジンに込められた思いをだれよりも強く、深く人々に伝えた。常に社会的なかかわりの中で、恐れず、ひるまず活動して来た筋金入りのロックアーティストなだけに、音楽ができることを今回も誠実に実行した。テロへの怒り、悲しみを超えた魂の叫び。その思いを共有したい。

(佐藤 紀生)



註1.:リクエストは相次いだ
・1200局ほどのFM、AM局を持つ米最大のラジオネット「クリア・チャンネル・ラジオ」が、事件直後約150曲の放送自粛曲リストを作成、その中に「イマジン」も入っていたことがきっかけ。ジョン・レノンの代表曲「イマジン」は、ベトナム戦争時に反戦歌として歌われた。また、ジョンも“革命家(笑)”として、アメリカ当局(FBI)にマークされていたこともあり、「イマジン」には反体制という色が付いている。しかしこの曲を無心で聴くなら、そんな歌でないことは明らかで、今回リクエストが相次いだのは、この歌に込められたシンプルな平和への願いを大切にしたいという人々の思いからだったに違いない。大手ラジオネットワークが自粛したにも関わらず、放送を続けた独立系ラジオ局や小さなラジオ局にリクエストが殺到、その結果、かえってイマジンに込められた思いに人々があらためて注目することになったのは、皮肉だった。

註2.:スタジオライブCD
・AMERICA:A Tribute To Heroes/アメリカ:ア・トリビュート・トゥ・ヒーローズ
Various (SR)/SICP-67〜68/2001.12.12/¥3,150
米国4大ネットワークが手を結んだ、米同時多発テロの犠牲者を追悼したチャリティー番組「アメリカ:ア・トリビュート・トゥ・ヒーローズ」のライブ・パフォーマンスを集めたチャリティー・アルバム。Bruce Springsteen/Stevie Wonder/U2/Billy Joel/Sheryl Crow/Sting/Paul Simon 等、蒼々たるミュージシャンが参加した。

註3.:ニールがこの曲を選んだこと自体に感動した
・ニールという人は、弱い立場の人々に対し暖かい手をさしのべるということを実践してきたミュージシャンだ。また、強い立場を振りかざすものに対し反骨心をもって立ち向かう“ロック魂”の持ち主、筋金入りのロックオヤジでもある。今回、彼が「イマジン」を取り上げたことで、イマジンという曲はまた一回り輝きを増した。(以上:あずみ)
ya1 馬鹿ミニ ya2

Imagine / by Neil Young