6/1/2002 up   ホーム  インデックス

pin 特権階級




石巻に転勤していた時の話。サンマの水揚げで常に気仙沼と激しく争う好敵手、女川魚市場近くの海底から、太平洋戦争後に長い眠りについていた不発弾が見つかった。爆破処理をするというので、取材した。湾を見下ろす県道わきの小高い丘が絶好のポイントで、マスコミ各社が集まった。もちろん住民も、この歴史的遺物の処理を一目見ようと、多数訪れていた。
後ろからはよく見えないと考えたのだろう、一人の住民(いかにも物好きそうなおっちゃん)がカメラの放列の前に出た。そのせつな、カメラを構えていた民放カメラマンが「前に出るな!」と怒気をはらんだ声で叫んだ。渋々下がるおっちゃんに対してこのカメラマンは「全く‥‥。こっちは仕事で来ているんだよ」と吐き捨てたのだ。
普段から、民放カメラマンの横柄な態度にはいささか頭に来ることが多かったが、この物言いはあまりにもひどい。同じマスコミに籍を置く者として諫めなければ(というより、我慢できずに)「ここは町有地だぞ。おれたちの土地ではない。仕事だからといって優先権はない。住民の人たちに協力をお願いするのはこっちの方だろう」とたしなめた。もちろん、こんなに冷静に言った訳ではない。頭に来ると、まくし立てるタイプなので、もっときつい言い方だったような気がする(註1.。まあ見かけが小心者そのものなので、迫力はないけどさあ‥‥。
でその「ジーンズ、Tシャツ、腹ボテ」カメラマンはどうしたか。鯖のような眼でこっちをジロッとにらんだが、何の返事もなかった。このヤロ!と再び頭に血が上りかけた時、親しくしていた民放の記者が間に入った。私と、そのおっちゃんには詫びを入れ、その場にいたマスコミ各社が協力をお願いするという形で、事態は収集した。いやはや(註2.
こんなのはたぶん全国津々浦々で起きていると思う。マスコミの鼻持ちならぬ特権意識。「そこのけ、そこのけマスコミが通る」。何さまなんだろと、逃げも隠れもできない地方新聞の記者としては思う。もちろん毅然と政治家などに接するのは、住民の側に立ち「権力の横暴は許さない」というマスコミの“チェック機関”として必要な態度だ。問題は、お偉いさんの取材ばかりしているうちに、いつの間にか自分も偉いと勘違いするヤツが出てくることだと思う。全国紙の政治部記者とかさ、プライドの塊みたいな、やな面構えしている輩も多い。大物政治家が尊大さだけ身に付けていくのと同じだ構造だよなあ。やだね。
メディア規制(註3.には断固反対するけど、報道する側の襟もただす部分は多々あるのではないか。「取材してやる」という姿勢。「自分が世論をリードしている」という思い上がり。はたまた誤った報道をした後のおざなりな訂正や、謝罪。中には事実確認もせずに無責任なうわさ話を書いて、後はほっかむりしたりするところもある(註4.。マスコミの大小や中央、地方も関係ないなあ。やだやだ。国民も市民も、マスコミに対してもっと文句をつけましょ。泣き寝入りなんてやめましょ。マスコミがどっちを向いて仕事しているのかを厳しくチェックしてくださいな。夜郎自大(註5.にならないようにね。

(佐藤 紀生)



註1.:きつい言い方だったような気がする
・「オマエ、ココハチョウユウチダ。ドケイウナ!オネガイシロ。キョウリョクシテクダサイイエ。ユウセンケンナイゾ」なんて超早口で云ったの?

註2.:いやはや
・のりおくんケンカにならずに収まってよかったねえ。ジーパンTシャツ腹ボテのナード野郎でも、のりおくんよりは強いだろうしね。

註3.:メディア規制
・前の国会から継続審議となっていた「個人情報保護法案」と、今国会に提出された「人権擁護法案」、「青少年有害社会環境対策基本法案」の3つの法案を、合わせてメディア規制法案というらしい。どれも行き過ぎた報道や、自由すぎる報道出版に対して、一般市民が危機感や怒りを持っていることから出てきてはいる。だが、一旦規制をかけてしまうと、規制だけが一人歩きし、報道の自由という大枠が崩れるという危惧があり、メディアに関わる人々はこぞって大反対している。まあ、どれも政府と自民党が自分の立場を強くする(というか出来るだけ弱くしない)という方向を目指しているということは、まあ確実だよね。

註4.:無責任なうわさ話を書いて、後はほっかむりしたりするところもある
・もしかしてのりおくんは、三陸新報のことを云ってるのかも知れない。このころ、例のとんでも議員がらみで、市議会議員を批判する投書が載ったり、記者が“噂ばなし”として書いたりしたのだが、曰く「某地区の市議会議員が酒飲み運転で捕まったという噂がある」とか、「市議会議員が視察先でゲイバーで朝までドンチャン騒ぎをしたという話がある」とか、「市議会議員が、研修先に行った先で業者から接待を受け、見返りに選定に口利きしたらしい」などなど。
・まず酒酔い運転だけど、これは完全に噂でウソだったのだけど書きっぱなしで訂正はなし。というか噂だし誰とも書いていないからいいと思ったのだろうか。それでは新聞の記事ではなくて、噂の眞相のようなゴシップ誌以下ですがな。
・研修先でゲイバードンチャン騒ぎだが、数名の議員がはとバスの夜の観光コースにあるのと同様の一般的夜のコースに行ったという事実はあったようだ。ゲイバーではなく、いわゆるオカマショーパプみたいなものかな。それは議長に報告し、釈明もしているらしい。しかしいくら投書とは云えきちんとした取材もないまま載せてしまってもいいのかねえ。
・業者から接待を受けたとされた件だけど、これは、三陸の取材である程度あきらかにはなってきた。ようは、視察先の業者で昼飯をご馳走になったというのが事実らしい。それに関連した議員が所属する会派が事実を認めたという記事を、鬼の首を取ったように書いたのだが、それが村上議員に対する辞職勧告決議案と議会の政治倫理条例も採決されたのが報道された一面のとなりの囲み記事。なんだか、村上議員を擁護しているようなタイミングで記事を出すなあと、オレなどは不審に思いましたぜ。
・その接待問題とゲイバー問題が、ゴッチャになって報道され、あとで訂正をいれたりなんだか訳分からなくなってるし。肝心の接待にしてから、職務権限みたいなものは多少は絡むし、議員の脇が甘かったことは否定できないし自戒してほしいことは確かなのだが、結局単なる昼飯、通常の儀礼の範囲でおさまるところだし、そんな大騒ぎしてもなんの価値もないという感じ。それよりまず、とんでも議員にキッチリ落とし前を付けさせるのが、どう考えても先だ。
・ということでこれこそ噂だが、上記3つの議員のエラーを知りうる立場にあったひとは1人しかいないという話もある。つまり、そのとんでも議員こそがその人。自分の立場を守るために、投書や噂を流すという形で三陸を利用したと云うことなんだけどね。まあ噂にしては、筋道が通っているので、かなり上出来な方だとは思う。
・さらに、三陸はなんだかとんでも議員を擁護するようなんだけど、何でかなあと思うと、もしかして、三陸の担当記者はとんでも議員とお友達だったのではないかとか、そういうこれは出来の悪い噂話もあったりしますがね。(この項:100% あずみ)

註5.:夜郎自大
・やろうじだい。井の中の蛙(いのなかのかわず)が偉そうにしている感じ。広い世の中を知らず、自分の仲間内で尊大にふるまうこと。(以上:あずみ)

ya1 馬鹿ミニ ya2

Tattler / by Ry Cooder