10/11/2004 up   ホーム  インデックス

pin にほい




某大病院の食堂でとても懐かしい匂(にお)いをかいだ。昔デパートの食堂に漂っていたのと同じだった。基本は香辛料の効いた中華スープか。それにカレーや揚げ油の匂いが混じっている。半分にちぎった食券を手にわくわくしながら料理を待った、幼いころの記憶がよみがえった。当時は排気がしっかりしてなかったため、濃厚な匂いが店全体に漂っていたのだろう。
五感の中で一番原始的なのは何か —— と話題になったのを思い出した。触覚、味覚、嗅覚(きゅうかく)で意見が分かれたが、どれも食べることと関連がある。鼻が詰まると味が分からなくなるし、舌触りなしでは味気ない。食べずには生きて行けない以上、この三つの役割は大きい。特に嗅覚が一番、奥底にある感覚ではないだろうか。味覚も匂いが占める割合が大きいと思うし、生々しく過去を思い出させる力は一番あるような気がする。「だから原始的」とは言えないけど。
小学低学年のとき、地区行事でお伊勢浜海水浴場に行き、真夏の太陽の下で食べたノリのおにぎり。何倍にもなった磯の香りが口の中に広がった。幼稚園時代、たびたび乗った地下鉄丸ノ内線。鉄さびと人いきれの混じった独特の匂いがした。進学して、10数年ぶりに変わらぬ空気を吸い込んだときの、あの驚き…。
家庭や地域にも匂いがある。人は自分だけの匂いをたくさん持っているのだろう。個人的には日々増えるオジン臭さだけはごめんだけどね。

(佐藤 紀生)

pin  あきちゃんが通った高校のPTA会報2003/9号から再録



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