1/30/2007 up   ホーム  インデックス

pin あなたの好きな刺し身は?




そこら辺の気仙沼人に聞きました。「あなたの好きな刺し身は?」

「戻りガツオに決まっているべ」(註1.とAさんは鼻の穴を三倍に広げた。うなずく人多し。
「ここは一つビンナガに一票」(註2.とBさん穏やかだが断固たる口調。
「やっぱクロマグロの大トロじゃないの」と主張したのはCさん。横から「ろくに食ったことないくせに…」(註3.と混ぜっ返す声を無視して涼しい顔だ。
「私はメカジキが一番」(註4.最後におずおずととDさん。これにCさんが
「あのゴリゴリ硬いやつ?」と食通を気取りかみついた。
ところがDさんに賛同する声が次々
「脂の乗った冬場は特に最高」
気仙沼人の一番好きな刺身はメカジキに決まったそうな。

とは架空の話だが、気仙沼をはじめ産地である港町や、消費地でも仲卸人など漁業関係者、料理人の中にメカジキファンは意外と多いと聞く。
昨年開かれたある水産研修会で、独立行政法人・水産総合研究センター遠洋水産研究所熱帯性まぐろ担当官は「職業柄、刺し身は食い飽きました」と会場を笑わせた後、「たまに刺し身を食べたくなったら、そこら辺のスーパーに入って、メカジキを買って食います」と言った。続けて「脂の乗ったメカジキに敵うのは、クロマグロの大トロぐらい」と真顔でのたもうた。会場は気仙沼の水産加工業者でいっぱい。ほとんどの人が「うむうむ」とうなずいていた。
さらに、メカジキは、欧米ではローマ時代から最も親しまれている魚の一つで特にイタリア、スペインではステーキとして食されていることを紹介。昨今、台湾船が世界各地で乱獲しており、資源量の低下が心配されているそうだ。

メカジキは気仙沼魚市場で二番目の水揚げ高を誇る。大味との間違った印象(註5.は、冷凍もののせいらしい。いつもは焼いて食べるメカジキ。大好物である。今度は刺し身でもじっくりと味わおう。焼いてうまいんだ。刺し身もうまいに決まっている。
刺し身ランキング。サンマ、アイナメやヒラメに交じりメバチ、キハダのマグロ類も顔を出すだろう。マグロ資源維持のため漁獲規制が強化されつつある。「安けりゃいい」という時代ではない。スローフード都市の住人として、資源の持続的利用をアピールしつつ、貴重な海の幸を大事に食べたい。


(佐藤 紀生)



註1.:「戻りガツオに決まっているべ」
・気仙沼市は1本釣りカツオの水揚げ高が10年以上続けて日本一である。カツオに脂が乗って本当に旨くなる戻りガツオのころ、ちょうど三陸沖に漁場があるので、われわれは本当に美味しいカツオを喰うことができるのです。美味しいカツオは本当に美味しくて喰ってるあいだはマグロよりゼッタイ旨いと思う。

註2.:「ここは一つビンナガに一票」
・ビンナガとはビン長(チョウ)とも云うが、小型のマグロで一本釣りカツオ漁船はビン長を釣ることも多い。最近は回転寿司の大ネタとして有名になってきたけど、スグそこで釣ってきたビン長の旨いことといったらそらあ喰ってるあいだは本マグロより旨いと思う。

註3.:「ろくに食ったことないくせに…」
・気仙沼人でもクロマグロはめったに喰えない。巻き網船団がよく獲る50キロ前後の小型のクロマグロはまあ喰えるけどそれならカツオの方が旨いかも。まれに定置網にかかったり延縄で釣れる100キロを超すシビなどともいわれるいわゆる本マグロは、氷詰めにされて築地直行っすから、顔を拝むこともないっす。

註4.:「私はメカジキが一番」
・釣りのトローリングだとハデなクロカワやマカジキやバショウカジキのほうが人気あるみたいだが、気仙沼ではカジキと云えばメカジキのことです。小さな漁船で水面近くを泳ぐメカジキを追いかけ、モリで突いて獲るいわゆる突きん棒で獲ったやつは一段と旨くてガツガツいくらでも喰えるし、そらあ喰ってるあいだは一番うまい。

註5.:大味との間違った印象
・脂が乗っていないものや鮮度の落ちたものは、かなり味が落ちてしまうので、美味しいやつを喰ったことがない人には印象が悪いのだろうな。でも、1回旨いものを喰ってみればいままで喰ってなかったことを後悔するだろう。ちなみに、魚屋の娘のうちの奥さんはメカジキの目利きが上手でいつも美味しいのを買ってきます、安くて旨いから偉いんです。(以上:あずみ)

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