9/21/2009 up   ホーム  インデックス

pin 成熟




気仙沼市からデパートがなくなった(註1.のはいつだったか。映画館がない街(註2.になって何年経ったのだろう。老舗書店もシャッターを下ろした(註3.。かつてはレコード店も兼ねており、ビートルズのアルバムを初めて買った店でもあった。
老舗といえば、元料亭の風格ある建物も街角から消えた(註4.し、地元スーパー跡地は駐車場になった。中心市街地のありさまは、全国どの地方都市でも同様だ。今の時代、隆盛を極めている地方を探すのは難しいだろう。
しかし気仙沼には観光資源がある。こんなに美しく波静かな湾はない。安波山から眺める、大島を抱いた気仙沼湾の情景(註5.は、日本人の原風景の条件を多く満たしているという。見渡しのいい高台があり、敵から身を守る森がある。これは人類が最も安らぎを覚える場所という。なるほど。しかも日本人は渚が大好きだ。
風景という自然面だけではない。気仙沼には「味」「体験」という心強い仲間の成長も著しい。
ついこないだまで、東京に行けば、いまだに日本が際限なく成長しているような錯覚に陥ったものだが、あっという間に「過去」になった。成長史上主義から言えば「衰退」なのだろうが、それは避けられない。人が年を取るように、街も国も齢を重ねる。
住んでいて気持ちのいいまち。きれいな海、空気、おいしい食べ物、訪れる旅人もくつろげるようなまち。「衰退」ではなく「熟成」。分相応の産業と暮らしを維持し、みんなが幸せに過ごせるまちを目指し、額に汗したい。


(佐藤 紀生)



註1.:気仙沼市からデパートがなくなった
・2002年ビブレ気仙沼店が閉店したときなのか、そのビブレの建物をそっくりつかってオープンしたイコーレが閉店した2007年5月なのかちょっと微妙。どちらにしろ、一般的なデパートとしての規模はなかった。

註2.:映画館がない街
・1998年、ジャスコ気仙沼ショッピングセンターがオープンしたのだが、その前身ジャスコ気仙沼店に併設されていたファミリーシアターが最後の映画館だった。いつまで映画を上映していたかは調べきれなかった。。。気仙沼から映画館が消えた後は、となり町岩手県陸前高田市の高田公友館が南三陸沿岸唯一の映画館として皆に親しまれていたが、こちらも2004年惜しまれつつ閉館した。

註3.:老舗書店もシャッターを下ろした
・2008年7月、気仙沼の文化に大きな影響を残した文信堂書店が閉店した。気仙沼の本屋といえば文信堂という時代は長かったが、フランチャイズの大型店とアマゾンなどの通販には勝てなかった。

註4.:元料亭の風格ある建物も街角から消えた
・2008年2月、かつて料亭古川家としてつかわれていた建物が解体された。歴史的な建物で、気仙沼地方で歴史的建物を保存すべく活動している「風待ち研究会」▼風待ち研究会活動報告(ブログ)▼により、内部写真などが公開されている。外観と内部▼内部▼土蔵▼解体現場▼。むかしは、気仙沼の旦那はんたちが通ったのでしょうねー。

註5.:安波山から眺める、大島を抱いた気仙沼湾の情景
・気仙沼人にとってはありふれてるんだけどねー▼。Blog ぐんじょう色のペン PHOTOGRAPH▼にあるけせもい写録▼などどーぞ見て下さい。(以上:あずみ)


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