pin明るく元気な癒し系
(佐藤家の日常から27)
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4月6日のこと

ばかなことばかりしている佐藤家にも当然、悲しいこともある。4月6日。殺しても死にそうになかったじいさんが、風邪ごときで75歳の生涯を突然閉じてしまった。
「明るく元気でとんでもなく頑固」#(1)な親父だったが、眠るようにあっけなくあの世に逝ってしまった。糖尿病から軽い脳梗塞(こうそく)にかかり、その後八年間、一病息災で元気に21世紀まで生き延びてきたが、糖尿病のボディーブローで弱っていた体に悪性の風邪がカウンターパンチで入ったのだろう。入院を拒んで、自宅で療養中、容体が急変した。不幸中の幸いは、遊びに来ていた、私の妹の息子を入れた3人の孫と、家族全員に見送られた点であろうか。死に顔は穏やかであった。
「明るく元気でかなりちゃっかり」なあきも
「明るく元気でちょっぴり嘘つき」なゆーたも
「明るく元気でとても負けず嫌い」なガイも、そして
「明るく元気でややセンチ」なばあさんも、みんな泣いた。
悲しい4月であった。佐藤家のメンバーが1人退場したのは寂しいが、またあっちからたまには参加してもらおう。

こないだのこと

葬式が済み、親類も去り、慌ただしさが去った翌日の夜。四十九日が済んだら温泉にでも行こう —— という話になった。じいさん抜きなのが寂しいが、ばあさんに元気を出してもらおうとあきが提案した。
「でも今まで、おじいちゃんとおばあちゃんが隣の部屋で、ぼくとお姉ちゃん、お父さんとお母さんが一緒に寝てたけどさ‥‥」
と突然ゆーたが言い出した。温泉での部屋割りについてである。
「でもおばあちゃん1人なのは寂しいから、ぼくが一緒に寝てあげる。癒してあげる」とゆーた。
「癒してあげる」という気障な言葉をどこで覚えたのかは分からないが、この辺は実に優しいやつではある。
となると負けず嫌いのDNAをかなり引き継いでいるお姉ちゃんも負けてはいない、「あきもおばあちゃんの部屋がいい」と言い出した。ガイも「そうすれば」と賛同した。私にも異論はない。
するとゆーたの目が「癒し系」から、突如「いやらし系」#(2)へと変わった。三日月目の周辺がピンクに染まるのが特徴だ。
「だめ。お父さんとお母さんを二人にすると、変なことするかもしれないから。でへへ」
商売柄「ら」抜き言葉は使わないようにしているが、できれば「いやらし系」からは「ら」を抜いて「癒し系」になりたいもんだ。え?「いやらし」「いやらしい」が正しい言い方、「ら」を抜いたら「卑しい系」じゃないのかって?それは食い意地一代・あきお姉ちゃんだわな。
ということで、じいさん心配するな。佐藤家は「明るく元気にいつも通りおバカ」だぞ。

( のりお )

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あずみによる脚註
巨人ファンで大神いずみにうなづいたじーちゃん、安らかにお休み下さい。
1.)「明るく元気でとんでもなく頑固」:
そのDNAを受け継いだのりおくんも、小心者なのに不埒千万、なんだかわからないがすごーく頑固である。
2.) 「いやらし系」:
ゆーたはますます、そっちの方に興味津々みたいだねえ。ともかく、癒し系グラビアアイドルとして井川遥が頭角を現しつつある昨今、いやらし系のグラビアアイドルNo.1は、やっぱ小池栄子でしょうか。




じーちゃんとゆーたのほのぼのとした関係がなくなって寂しいぞ。