pin仲良くドンパチ
(佐藤家の日常から36)
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あきちゃんは高校1年生を無事修了した

クラスでまとめた文集のアンケートで、堂々の天然ボケ第1位に輝くなど(しかも他の追随を許さないダントツの17票をゲット)、日々、あちらこちらで「天然ボム」の自爆テロを敢行し、周囲にいる善良な級友を巻き込んでいたことは想像に難くない。
入学時に巻き起こした「靴盗難事件」(下駄箱のトップバリュ参照)から始まり、家庭科の時間にはぶっといまち針を指に刺して、血がピューッと噴き出し、授業をストップさせたこともあったらしい(本人談)。授業が終わった後、他のクラスの生徒からも「あき、大丈夫」と心配されたという。情報はすぐにメールで広がっていたのだ#(1)
あきは、そんな優しい友達に感激したというが、父が思うに「きょうのあきは危険です。近寄るときは注意しましょう」という天然ボケ注意報が発令されていたのだなあ —— と考えるが、どうだろうか?
そんなあきも、めでたく2年に進級。しかしその最後にも、きちんと落とし前をつけるのが彼女らしい。

修了式の後

彼女は上機嫌であった。無事進級できたのと、成績がそこそこ良かったためと思われた。私の長年の観測では、あきがこういうハイな状態のときに注意報が発令されることが多いのだ。母親の方は、警報も注意報も関係なく「のべつ幕なし」なのだが、そこは冷静沈着な父親の血のおかげで#(2)、ある程度は抑制されているのであろう。
家族全員に誇らしく見せようとした通信簿。しかし、ない。鞄を見ても、ない。弁当箱の中にもない。スカートをめくっても、ない。どこにもない。結論。「学校に忘れた」。実に簡単である。なーんだ。うははは‥‥。
しかし。通信簿なんていらない、捨ててしまいたい —— と思ったことも多々あったと思われる母親は、こういうときに容赦しない。
「あんた、バカじゃないの。学校に通信簿忘れるなんて人いますか。小学生ならいざ知らず。高校にもなって」
まっこと正論である。
「私はないからね。小学校の時でも」
全く容赦がない。この後も2,3発のジャブを放ったガイは、あきを連れて学校へ。
当然、車の中でも、学校についてもあきはガイの口撃にさらされるはずだ。あきは、しばらくは我慢するものの、当然、そうした屈辱をいつまでも受け入れる訳はなく、反撃を加えるはず —— などと想像しながら2人の帰りを待った。
しかし。確かに車の中では砲撃と反撃を繰り返した2人だったが、学校では一言も口を開かなかったという。なんでだろ?
昨年、入学時に始まった天然ボケ伝説に、新たな1ページが加わるのを2人とも良しとはしなかったのだ。そう意見の一致した親娘は、息をひそめて学校に潜入。抜き足、差し足で教室まで行き、あきの机の中に放り込まれていた通信簿を無事に回収。再び、先生たちに見つからないように、こっそりと学校を抜け出して来た#(3)。こういうことだそうだ。
その間、約10分。通常なら派手にドンパチをやらかしながら、転戦する2人が、押し黙ったまま、こそこそと行動を共にするー。とてもストレスのたまる行動だったに違いない。帰宅後しばらく、いつもに増して切れのいいジャブの応酬が見られた。
その後のとある日。「1日でもいいからケンカしない日を設けたら?」と提案した。
「無理だってば、絶対」
「無理、無理」
「そうだよねー、あき」
「うん。ねー、お母さん」
トムとジェリー#(4)か、おまえらは。

( のりお )

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あずみによる脚註
抜き足差し足でこっそり忍び込んでも、あの二人なら誰かに見つかってると、おれは思う。
1.) メールで広がっていたのだ:
いまどきの女子高生は、授業中でも当然のように携帯メールするんだね。いいオモチャだよなあ。
2.) 冷静沈着な父親の血のおかげで:
冷静沈着になった気で、落ち着いた顔をして、とんでもない凡ミスをカマスのがのりおくんだよね。
3.) こっそりと学校を抜け出して来た:
なんかにつまずいたり、バケツをけっ飛ばしたり、机をひっくり返したりしなかったのだろうか?ゼッタイなんややってると思うのだががあ。クルマに傷がついてない??
4.) トムとジェリー
カートゥーン・ネットワークの看板アニメ。制作はジョセフ・バーベラとウィリアム・ハンナのコンビ。ハンナ=バーベラが1937年にMGMで最初に作ったのが、トムとジェリーの第一作「上には上がある」。それが高い評価を得、トムとジェリーをはじめとする作品がどんどん作られていき、いまに至る。アカデミー賞7回、エミー賞沢山。その他の代表作品は、「チキチキマシン猛レース」「原始家族フリントストーン」「大魔王シャザーン」など。ちなみに、わたしは「ドルーピー」が好きだったが、ドルーピーもハンナ=バーベラでいいのかな?




ふたりとも仲良くケンカしてね。