pin毛生え登録
(佐藤家の日常から38)
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ゆーたも中学生になった

バカな親でも子供は育つ。ただやはり、おバカに育ってしまうのが難点だけどね。佐藤家の令息もついにというか、やっとというか中学生になった。勉強は相変わらずさっぱりしないが、部活のバスケットボールに入れ込んでおり、まあ彼なりに順調な中学生活のようだ。
奥手だった父親の血をきちんと受け継いだゆーただが、ようやくチンポコに毛が生えた。親父より数カ月は早い。たいしたもんである。しかしまだたったの一本。長さは二センチほどで、磯野波平さんの頭髪のようにポツンと生えている。とは言え、第二次性徴のシンボルだ。女の子ではないので赤飯炊いたりはしなかったが、家族全員で乾杯して祝った。
そんなゆーたは今、大きな悩みを抱えている。それは母親がこんなことを言っているからだ。
「チンポコに毛が生えたら、ちゃんとお母さんに教えなさいよ。市役所に届けるんだからね」#1).
おい!そんなことだれが信じる‥‥と怒ってはいけない。ちゃんと信じている十二歳がいるのだから。
実はこの冗談は、ガイのオリジナルではない。ガイの親友であり、体力面において永遠のライバルであるSちゃんからの入れ知恵である。Sちゃんが、自分の小学六年生の息子にこう言っているそうで、ガイは、この体力の友のアイデアをちゃっかりと盗用しているのだ。
この話をしたとき、あきもそばにいたそうで、そのお姉ちゃんの方も
「えっ、知らなかった。いつ届けるの?」
と真に受けていたというから、何ともはやだが、この姉弟はそろいもそろって小学校を卒業するまでサンタクロースの実在を疑いもしなかったという世間知らずなので、だますのは実に簡単なのである。
「Aちゃんのお母さんは、この間市役所に行ったってよ。来週行こうね。ゆーた」
「やだよ。お母さん一人で行って来てよ」
「だめだってば。生えたっていう証明ができないでしょ。ちゃんと見せないと」
「えっ。見せるの?だれに」
「市役所の人にでしょ」
「男?」
「当たり前でしょ!女の人に見せるの?」
「‥‥‥」
可哀想なゆーた。そこでおれが助け船を出してやった。
「お父さんのときは、市役所に行ったけど、今は写真でいいはずだぞ」
ナイスなフォローではないか。
「ふーん。じゃあゆーた写真撮ろうよ」
「今?」
「お父さん、デジカメ買ったから、それで撮ってもらおうね」
「撮ろう、撮ろう!」
とあき
「そうだね。記念だしね」ばーちゃんまで賛成する。
家族全員からとことんからかわれる、ゆーたであった。写真は撮ってないので、市役所には依然届けができない状態が続いている。いつ気が付くんだ?ゆーた。

そんな青春の悩みに揺れるゆーただが、もう一つ揺れているものがある。
長風呂が好きなゆーたは、熱膨張し(?)すっかり伸び伸びになった「きゃんたま袋」を、腰を前後にゆすって、自分のお股に「パコン、パコン」とぶつけるのを楽しみにしており、それをばーちゃんに見せるのを日課としているのだ。
両腕を交差させて脇の下を「パコン、パコン」いわせる#2).のは子どもの時にやった覚えがあるが、それをきゃんたま袋でやるとは‥‥。青春の悩み以上に揺れる孫のきゃんたま袋を、ばーちゃんはどういう思いで見ているのだろうか‥‥。
毛が生えた写真にプラスして、その「パコン」ビデオを市役所に届ける必要があるかもしれない。できればかわいい女性職員に見てほしいな(ばかもの!)

( のりお )

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あずみによる脚註
このさいだから、そのまま写真を撮ったらいいのでは。
1.) 市役所に届けるんだからね」:
みてこうもんから半年、ついにはえたのね。おめでたいようなどうでもいいような、ともかくここまで来たらちゃんと書類を作って提出してみたらどうでしょうか。
2.)両腕を交差させて脇の下を「パコン、パコン」いわせる:
あのプロレスの怪力豊登(とよのぼり)のまねだね。おれたちの世代の男なら、絶対やったことあるよね。力道山亡きあとの日本プロレスのエースだったが、馬場にとってかわられ、馬場全日、猪木新日で対抗するきっかけを作ったような気がする。新日に所属したあと引退して、亡くなっている。




届け出写真は、アップはしないから一応見せてくれ。