pin恐怖のマグマごっこ
(佐藤家の日常から46)
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ゆーたの観察日記


インフルエンザになってしまいました。学校のスキー合宿で女の子にいいところ見せて、これで今年のバレンタインデーはいただき!と思っていたのに、女の子の熱いハートをゲットする前に、自分で熱を出してしまいました。ぐすん…。
熱が下がらなかったので、三条小児科に行ったら、やはりインフルエンザでした。三条先生がなぜかうれしそうに「ほうら、やっぱりウイルスが出ましたよ」と検査結果を教えてくれました。あっ!中学生になっても小児科に行っているというのはクラスの女の子にはナイショだからね!でも、あきお姉ちゃんは高校に入るまで三条小児科だったので、まだぼくの方がましだと思います。お姉ちゃんは今でも小児科で十分だと思いますが、これもナイショです。復しゅうが怖いから…。お母さんはいつものように「インフルエンザごときに負けて」と言わんばかりに、僕を見てました。オバカさんは風邪をひかないそうです。あっ!これは絶対ナイショ!
今は熱も下がりました。でも治りかけが大切ということで、昔、おじいちゃんの寝室だったお仏さんの部屋に隔離#1.されています。ヒマです。チョーひまです。勉強しなくていいのはラッキーだけど、テレビも見れないし、ゲームボーイも取り上げられています。それとお母さんが突然入ってくるので、ちゃんと寝てないと怒られます。マスクしているお母さんはいつもに増して迫力があります。ぼくがちゃんと寝ているか、目をぎらりと光らせます。

お母さんやおばーちゃんとの連絡には、イクオおじちゃんからもらったトランシーバー#2.が大活躍しています。
「のどが渇きました、どーぞ」
「今持って行きます、どーぞ」
とても便利です。
でも眠っているのに「ちゃんと寝てますか、どーぞ」と、お母さんに起こされることも多かったです。これは間違った使い方だと思います。
熱は下がりましたが、なぜか生まれて初めてジンマシン#3.になりました。かゆいです。三条先生はウイルスのせいだと言って薬をくれました。でもぼくは、インフルエンザになったとたん、お姉ちゃんが「ゆーた、大丈夫。何か食べたいものなあい?欲しいものあったら言ってね!」と、チョー優しいのが原因かもしれないと思っています。お父さんは障子の向こうで「なんでだろー、なんでだろー、何でかジンマシン」と楽しそうに踊っています。お母さんも背中の変な形のジンマシンを見て笑っています。ひどいです。

お母さんといえば、昔、えーとぼくが小学校3年ぐらいのときの話を思い出しました。
お母さんがソファーで横になっておやつをぼりぼり食べながらマンガを見ていたので、ぼくも一緒にソファーで寝ようと思って、お母さんの背中にくっついたら、お母さんがでっかいおしりでぼくを床にでーんと落としました。ひどい!とぼくは思いました。そこで「お母さん、もしも床がマグマだったらぼくは死んでるよ」と言って、またソファーに戻りました。するとお母さんはまたおしりをぶいんと振って、ぼくは再び床にででーんと落ちました。
頭に来たので「お母さん。ほんとにマグマだったらどうする?」と聞きました。するとお母さんは「ごめん。ごめん。冗談、冗談」とぼくの頭をなでてくれました。やっぱりお母さんは日本一のお母さんだなと思いました。ぼくはうれしくなってお母さんを背中から抱きしめました。そしたら、またまたでっけーけつをぼいんと振って、ぼくを床、マグマに落としました。ぼくは驚いて、悲しくなって泣いてしまいました。するとお母さんはやっと「うそ。うそ。ゆーたをマグマなんかに落とすわけないじゃない」とぎゅっと抱きしめてくれました。
後でお父さんに聞くと「ゆーたの泣きべそ顔がかわいいの」と言っていたそうです。ひどいお母さんです。

ひどいといえば、お父さんも違う意味でひどいです。ぼくには直接被害はあまりありませんが、お父さんの友達は大変みたいです。この間もこんな話を聞きました。
お父さんのお友達にあずみのおじちゃんがいます。お父さんは去年、仕事で使うデジカメを買うとき、パソコンに詳しいあずみのおじちゃんに相談していました。とゆーか、ほとんどあずみのおじちゃんまかせにしていたようです。いつものことです。とにかくニコンとかキャノンとかの5、6万円のカメラがいい —— ということになりました。お父さんも一応、デンコードーに行ってパンフレットをもらってきていました。
それなのに、お父さんはカシオという会社のデジカメがわずか3万円ちょっとで売っていたので、その安さに目がくらんで即買ってしまいました。それをあずみのおじちゃんにお父さんが報告すると、あずみのおじちゃんの目が点に#4.なったそうです。あずみのおじちゃんは、めぼしい会社のめぼしい機種はほとんど調べたそうですが、ぽかんと一つだけカシオが抜け落ちていたそうです。あずみのおじちゃんの好意は何だったのでしょう?友達にそんな思いをさせるなんて、ひどいと思います。迷惑だと思います。お父さんの友達にはなりたくないな —— と思いました。
あずみのおじちゃんの髪の毛は数本抜けたらしい —— とお父さんはさらにうれしそうに笑っていました。
こんなひどいお母さんとひどいお父さんの息子に生まれたぼくは、やはりひどい大人になるのかなあ?それよりバレンタインデー必勝法を考えないと。でへへ。

( のりお )

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あずみによる脚註
のりおくんのりおくん、これって基本的にはゆーた視点なんだけど、露骨なのりお視点が何個も入ってるよ。いいのでしょうか。 。
1.) 隔離:
インフルエンザを隔離しても意味ないのでは?マスクも全然意味ないのでは?
2.) イクオおじちゃんからもらったトランシーバー:
トランシーバーについては、携帯トランシーバーを見てね。
3.) 生まれて初めてジンマシン:
そういえば、のりおくんはジンマシン体質だったよね。。
4.) あずみのおじちゃんの目が点に:
その話についてはもうなにも云いたくないけど、今なら Nikon COOLPIX5000 を買うべし、と云うでしょう。しかし、どうして本能的に抜け目をキッチリついてくるかなあ。と、いまさら愚痴ってもぜんぜん無駄だぞ。




人の好意をないがしろにするのりおくんはきっと、マグマに落ちると思います。