pinプーさんとミニバラの日
(佐藤家の日常から58)
yoko
yoko


5月初めの、とある日…


あきからガイに電話があった。
自宅ではなく、ガイのバイト先に。しかも1日で最も忙しいお昼時間にピンポイント。当然、携帯ではなく店の備え付け電話。よほど大切な用事なんだろう。ガイはほんの少し眉間のしわを深くし、心配顔で受話器を取った。
「あっ、お母さん」
「何? どうした?」
「あのねミッキーさんと、ミニーさんと…クマのプーさんではどっちが好き?」
「今忙しいんだけど」
「だから早く。どっちがいい?」
どうせ出た電話だ。ガイもあきのちょっぴり困った声の調子を感じ取ったのか、返事した。
「うーん、どちらかというとミニーちゃんかな」
と自らの年齢とキャラクターからして、ネズミよりはツキノワグマというか、ヒグマというか、シロクマでもグリズリーでもいいがどう見てもクマ系なのに、いやだからこそミニーちゃんを所望か…。それに対して、電話口にはあきの明らかな動揺の色が伝わって来たという。
「ええっ! どうしてもミニーちゃん? プーさんじゃだめ……」
と何となく困ったときの、頼りなげな声。まあガイも別に特定のキャラクターを偏愛するタイプではないし、大体において物事に固執するタイプではない#1.ので、あっさりと
「まあ…プーさんでもいいかな」
と返事。
「本当? プーさんでいい? 良かった」
とあきの安堵(あんど)の声が…。
しかしまた少し低い声で第2弾。
「…カーネーションとミニバラはどっちが好き?」
ぷぷぷっ! ここまで質問されれば、勘の鈍いガイでもピンとくる。当然こう答えた。
「うーん。ミニバラかなぁ」
そうすると、明らかに受話器の向こうは花が一気に満開になったような弾んだ声。
「ミニバラね! 分かった。じゃあね!」

後で聞くと、やはり母の日のプレゼントであった。実際にディズニーストアから届いたのがこれ。

Pooh-roses

クマのプーさんが抱いている花かごにはピンクのミニバラが咲き誇っていた。
ガイはあきにありがとうの電話を入れたが、状況は案の定、みなさんも予想の通り。そう! ミニーちゃんのカーネーションバージョンを買いに行ったら売り切れ! 残っていたのが、プーさんのミニバラセットという訳だ。
ずぼらな私なら「まあ、あえてこれを選んだことにすればいいよな。どうせミニーさんでもプーさんでも鬼太郎でも気にしないだろうしね」と考える。しかしあきの場合、一応本意ではないプレゼントなので、それをおずおずとリサーチするところが親ばかながらかわいい。優しい心根を感じる。最も相手が(ミニーちゃん)&(カーネーション)を選んだとしてもどうしようもないんだけどね。それを確かめようとして電話をかけて来るところが、天然娘の天然たるゆえんではある(笑)
しかも、そのアンケート電話では「お母さん、土曜日休み?」と聞いてきたという。つまりクマのぷーさんのミニバラセットという母の日のプレゼントが土曜日に届くことがバレバレなのだ。いやはや…(^_^;
あきからの要望。写真を撮ってメールで送ってほしいという。玄関先でガイにプーさんのミニバラセットを持たせて撮影。それをメールに添付して送った。
あきからは、さらにこんな要求もあったという。
「お母さん。気に入ってくれた? 良かった! じゃあジャンプして。うれしいならジャンプして」
あきは昔から、うれしいことがあると相手にジャンプを強要する変な癖がある。#2.
「えっ?またあ…」と難色示したガイ。でもほんの少し玄関でジャンプ。まあ佐藤家の「母の日」らしい光景ではありました。
あきちゃん、父の日もよろしくね#3.


( のりお )

yoko
yoko

あずみによる脚註
うちの息子も嬉しいとジャンプしてるかも。あきちゃんの性格の良さがでているエピソードだが、どうもペン先が鈍いような気がするぞ、のりおくん。
1.) 大体において物事に固執するタイプではない:
固執は全然しないけど、一旦決めたことはキッチリ守るし、疑ったりしたら大変なんだよね。ねー。
2.) 相手にジャンプを強要する変な癖がある:
そういえば100点満点のジャンプのときは鬼気迫るジャンプ強要だったなあ。
3.) 父の日もよろしくね:
じゃあ父の日はね、欲しいCDのことを細かく聞いておいて、実際に送るのはプーのネクタイなんてどう?




あきちゃんはゼッタイ浮気なんてできないね。