1/24/2003 up   ホーム  インデックス

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幼少のころから偏愛する魚肉ソーセージを食べようと手に取り、ふと袋を見た。
商品は「MARUHAソーセージ」。「お買い得・限定版4本プラス1本」「賞味期限03.02.18」の表示、「カルシウムたっぷり・製品100グラム中に牛乳2.5倍のカルシウム」という健康志向の宣伝文句。さらに大きな文字で「保存料は使用していません」と書いてあり、そして店が貼った値段のラベル。
注目すべきは「保存料ゼロ」ということだ。以前は、こんな文句はなかった。魚肉ソーセージ、おまえも時代の荒波の中をたくましく生き抜こうとしているのだな —— と、ひとりごちた。
食べ終えた後、袋の後も見たら。おお!こちらはぎっしりと文字が並んでいるぞ!
「外装プラ」の表示、「バーコード」「おいしい食べ方—ソーセージの野菜炒め」(内容は割愛)。メーンである名称、原材料名、殺菌方法、内容量、賞味期限、保存方法、製造者。そして栄養成分表示(エネルギー、たん白質、脂質、糖質、ナトリウム、カルシウム、食塩相当量)。
そして「本品製造工場では乳を含む製品を製造しています」「でん粉(コーンスターチ)のとうもろこし、植物性たん白の大豆には遺伝子組換の原材料を使用していません」「製品中の黒いはんてんは、原料として使用しております魚の皮で異物ではありません」の断り書き。さらには電子レンジでの加熱するさいの注意書きまである。
笑ったのは「歯を損なう可能性がありますので、包装に使用されている金属クリップ及びフィルムを歯で噛み切らないで下さい」というご丁寧なアドバイス。あっ!さっき歯で金属クリップを挟んで、ぐるぐるソーセージを回して、かみ切ってしまったぞ(註1.。いけないことを30数年以上続けてきた私を許してください(笑)
そう反省しつつ原材料名を見た。おお!ここも、ごちゃまんと何か書いてある!ここまで来たら全部読まずにいられるか!
えーと「魚肉」。当たり前だな。カッコ内には(たら、ほっけ、いとより、その他)とある。いろいろな魚のすり身が使われている。続いて「結着材料(でんぷん—コーンスターチ、植物たん白—小麦、大豆、ゼラチン」。これはつまり粘り気を出すものだな。次いで「豚脂肪」「精製ラード」。えっ!魚肉ソーセージなのに豚の脂肪?ラード?偏愛歴30数年で初めて知る事実に驚く(註2.。…魚肉特有のパサパサ感を補う脂肪分なのだろうか?うーむ。その後は「砂糖」「香辛料」「炭酸カルシウム」「調味料(アミノ酸等)」「くん液」「赤色106号」そして最後に「原材料の一部に卵を含む」とある。
なんとにぎやかなことであろうか。ソーセージは腸詰めのことだから、基本的には肉と塩を腸に詰めればできあがりなのだろうが、なにせこれは元が魚肉、粘り気を出したり、臭みを取り除いたり、風味をよくしたり、さらには食欲をそそるよう色をよくしたり、保存性を高めたりするため、こんなにも多くのものが添加(註3.されているとはね。
その昔。日本で肉が高級品であった時代。海に囲まれた我が国で、魚肉を使うソーセージを生み出した先人たち。そのソーセージもどきを製品にするための努力が、結果としてこのような添加物を必要としていたのだな —— と実に哲学的に(註4.考えた。
うーむ。食品表示の裏の顔、その大物はこの食品添加物であった。台所にある食品の包装の裏側をのぞくと、そこには奥深い食品添加物ワールドがある。このカップラーメンも、あのヨーグルトも、そしてそこのスナック菓子にも……。

振り返るに、私らが子供だった昭和30年代、とても安全とは言えない添加物がごちゃまんとあったに違いない。発ガン性のある甘味料として使用禁止になったチクロをはじめ、見るからに毒々しい色をした食品も多かった。
中でも忘れられないのは、駄菓子屋にあった「試験管ゼリー」(註5.というお菓子。名前の通り、試験管の形をした透明な容器に、赤やオレンジ色したドロッとしたゼリー状の物体(註6.が入っていた。これに竹ひごを差し込んで、まとわりついたゼリーをなめる。味は甘酸っぱく、ツーンとする酢の匂いを覚えている。子供心にも随分怪しく感じたものだった。(註7.
このほかにも私らの世代は、タラコといえば「真っ赤」、ウインナーも「真っ赤」が常識だった。夜店の酢イカも「真っ赤」だったよなあ。まさに「赤色エレジー」。チクロはダメでもサッカリンはOKで、ジュースいう名の細長いビニール袋に入ったオレンジ色のサッカリン水をがぶ飲みしていた。
冷蔵庫が普及する前には、日持ちさせるために、さまざまな保存剤が使われていたに違いない。添加物とは違うが農薬も使い放題だったし、私の体にはさまざまな毒素が染み込んでいるんだろうなあ。

あらためて食品添加物を調べてみた。現在厚生労働省で認められている添加物は、ビタミンEとか乳酸とか自然に存在するもので400、全体で1000を超えるという。
分類すると、甘味料、着色料、保存料、増粘剤・安定剤・ゲル化剤・糊剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防カビ剤、イーストフード、香料、酸味料、調味料、豆腐用凝固剤、乳化剤、PH調整剤、かんすい、膨張剤、栄養強化剤、その他(加工補助剤)がある。頭がクラクラする。
基本的には“添加物だから体に悪”という訳ではない。大体、豆腐は「にがり」がないと、それは豆乳に過ぎない。「にがり」を添加することで、初めて凝固作用が働いて豆腐ができる。シソの葉で色を着けるのも添加には違いない。
それと加工食品の場合は、これはもう添加物がないと製造できないものも多い。日持ちをある程度考えなければならない商品もあろう。まあ、食品を扱う会社の良心として、より安全性に配慮してほしいと願うし、できれば必要最小限の使用にとどめてほしいとは思う。
もちろん消費者の認識も変えていかないといけない。肉を新鮮に見せるための発色剤などは、少しでも色味が悪いと売れないから使っているというし、逆に「自然な色」に近づけるために着色するケース(註8.もあるというから本末転倒だ。やっぱり私たちも勉強しないといけないなあ。
2002年5月、協和香料化学茨城工場で製造している香料の中で、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ヒマシ油等の指定外添加物が含まれていたことが表沙汰となり、回収騒ぎとなった。お菓子の場合は、フレーバーがとても重要な役割を果たすから、どうしてもこのようなことは起きるんだろうね。香料に使われている添加物の種類はとても多く、これを食品に表示しようとしたら、パッケージ全部がまるで“耳なし法一”が全身に書いた経文のように、原材料や添加物の名前で埋め尽くされたりしてね。何の商品だか分かんなくなるなあ。
前述したように、子供のころからさまざまな添加物を蓄積してきた「複合汚染」世代なので「今さら気にしてもなあ」と思う半面、でもやはり微量でも体の変調を来すものや、長い間に徐々に蓄積していって「そろそろ悪さでもしようかしら」とうずうずしている輩もいるかもしれないし、正しい知識は持っておきたいところだ。それとアトピーをはじめアレルギーのある人にとっては、やはり必要な情報だろう。

佐藤紀生という商品の添加物をふと考えた。ニコチン、エチルアルコール、増毛剤(うそ)、精神安定剤が検出されそう。たまにビタミンEの錠剤やビタミンC入りドリンクも飲むから、これは酸化防止剤かも。頭や体は随分錆び付いてきているのがやるせない。まだ一部男性器官の膨張剤「ばいあぐら」は必要としてないけど、年だし、そのうち添加を考える時期がくるかもしれない。足の指の間に防カビ剤を塗布するのが長年の夢なんだけどなあ(かゆみの甘さ参照)。えっ?ヒ素、筋弛緩剤?(註9.勘弁して。賞味期限はとっくに過ぎたんだろうけど、何かのお役に立ちますから見捨てないでね。

(佐藤 紀生)



註1.:かみ切ってしまったぞ
・のりおくんは、歯がまだ丈夫なんだね。おれなんかそれができないから、魚肉ソーセージを喰うとき困るんだよなあ。

註2.:偏愛歴30数年で初めて知る事実に驚く
・肉やさん系の魚肉ハムには、羊とか馬は昔からはいってたよね。その流れで丸大ハムなんかの魚肉ソーセージには肉が入ってるものもある。それと最近は、値段が安いサケもかなり使われるようになっているね。

註3.:こんなにも多くのものが添加
・でんぷん系の添加ってさ、水増しのため、つまり少ない魚肉すり身で多くの多くのソーセージを作るためってことなんだと思う。

註4.:実に哲学的に
・というか、プロジェクトXに毒されてないでしょうかのりおくん。

註5.:「試験管ゼリー」
・あれって、正式名称はなんなんだろうね。ともかく思い出すと恐ろしいような喰いものだったよなあ。

註6.:赤やオレンジ色したドロッとしたゼリー状の物体
・グラデーションがあったりしたよね。ゼリーというよりか、もっとゲル状で、味は強烈に甘酸っぱい。いくらガキでも、あんなもの喜んで喰ってたなんて、やだなあ。(ここまで:あずみ)

註7.:子供心にも随分怪しく感じたものだった
・考えれば不思議なお菓子だ。何で試験管なんだろ?試験管でアイスキャンディーを作ったという話を聞いたことがあるので、その延長線上にあるのかしら。
……一流大学の物理学部応用学科卒業後、大手食品メーカーに就職したエリート、小野武敏彦。順調に出世街道を歩むも、働き盛りだった42歳の時に、同じ新商品開発部で働く専務の娘と不倫。なまじまじめに生きてきただけに、心中騒動を起こし、それがもとで解雇。流れ流れて、従業員わずか5人という東京下町の零細食品に職を求めた。主力商品は駄菓子。ところが、あまりパッとした商品はなく経営はいつもじり貧。給料も遅配が続き、離婚し、男の子2人の養育費の支払いにも困る有様。小野武は、立派な設備の整っていたかつての食品開発室で試験管を振る自分を思いだし、自らの悲運を呪った。
 はた!と小野武は気づく。子供のとき、試験管やビーカーといった実験器具はなんと輝いて見えたことか。これだ!お菓子を試験管に入れてみよう!とまあ、試験管ゼリーにはこういう秘話が隠されていたのである(たぶん)。(この項:のりお)

註8.:「自然な色」に近づけるために着色するケース
・福神漬けやたらこなんか、そうらしいね。それにしても、たらこってさ、やっぱり赤い方が美味しく見えるかも。とくに明太子はねえ。

註9.:筋弛緩剤?
・精神安定剤ってさ、筋弛緩効果があったりするらしいので、多量にもられないように気をつけてね。(以上:あずみ)

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Bottle Up and Explode! / by Elliott Smith