pinシールの役目
(佐藤家の日常から79)
yoko
yoko


母の死去という大きな波乱があった2009年。


新年に八百万の神を迎えるに当たって#1.、神主さんに頼み、清めのお祓をしてもらった。

ゆーたは東京なので仕方がないが、仕事が休みで束の間の帰省していたあきは、私ら夫婦とともに参加した。
祝詞奏上の後、私、ガイと二礼二拍一礼をし、豊葦原瑞穂の国#2.の神々に佐藤家の家内安全を祈った。
あきは、神主さんや私のやり方をじっくり見て、祈祷の練習。私の動きに合わせ、軽く礼をする。ガイはその様子を横目で、微笑ましく「うふふ」と眺めていたという。
あきの番。神棚前まで進み、正座し直した。その瞬間、あきの右靴下の足裏に、何やら白い長方形が…。縦1cm、横2cm。そして3つの数字が並んでいた。太字ゴシックで「105」

それは間違いなく、見まごうことなく、悩む余地すらなく、値札シール。シックな黒い靴下の底に、張り付いた値札シール!
とても気合いの入った礼をし、いつものように長く、長〜く家内安全、家庭円満に祈りを込めるあき#3.
しかし、その神聖な瞬間、さっきまで静かに微笑んでいた母、そして父は、笑いをこらえようと苦悶していた。ついにはこらえきれずにガイが吹き出す。

値札シールの張り付いた場所は、神主さんから死角になっており、見えない。あきの長いお祈りを父母が笑っている ── という感じだろうが、神事で笑い声は余りにも失礼。私とガイは、笑いにブレーキを掛けようと必死だった。
「笑いを止めるには、悲しいことを考えれば…って、葬式でもあるまいし、今はお祓いだから、御法度だし…」。
それでもどうにか、笑いを抑え込んで、神事は無事終了。いやあ冷や汗をかいた。#4.

あきの靴下に張り付いた値札シールは、大手コンビニのもの。ガイが神主さんに出すお茶菓子をコンビニで購入。ゴミ箱に捨てた際、床に落ち、それが「ペタッ」となったのだろう。「佐藤家お笑いオンステージ」に立つと、地味な値札シールすら自らの「お客様に商品のお値段をお知らせする」という使命とは全く縁のない、お笑いの小道具として、フィーチャーされてしまうのだ。

佐藤家の舞台から下り、楽屋裏に回った母も、数年前に袖に退いた父とともに相変わらずの孫娘の「天然ぼけ」を大いに笑ったに違いない。
その天然ぼけを、お膳立てしたのはガイ。あきも大人になり「悪いのお母さんでしょ」と責めないのはちと寂しいが、ガイは「シール貼りつけて、気づかないなんて」と、責任逃れをしている。相変わらずなのであった。
ということで、佐藤家は笑顔全開! じいちゃん、ばあちゃん、今後とも孫の加護をよろしくな!!


( のりお )

yoko
yoko

あずみによる脚註
靴下に、苦い思い出があるのはわたしですから。

1.) 新年に八百万の神を迎えるに当たって:
喪中には新年に神を迎えないという考えもあるのかもしれないが、新年は祝わないまでも、お祓いをして神を迎えるというのはありなんですね。うちでは、どうだったかな?
2.) 豊葦原瑞穂の国:
ふつうは「とよあしはらみずほのくに」と読むのかな。古事記や日本書紀あたりに書かれている、日本の美名らしいけど、そのころの日本には気仙沼あたりはゼッタイ入って無いだろうなー。
3.) 長く、長〜く家内安全、家庭円満に祈りを込めるあき:
あきちゃんが、いかに長くお祈りするかは、あきのお願い▼を参照のこと。今回は、仕事のことや、彼との事なんかも祈ったのだろうか。
4.) いやあ冷や汗をかいた。:
私にとって靴下は鬼門なのかw。不惑▼参照してね。(この項・のりお)




せっかく久々の登場なのに、シールが主役では、あきちゃんファンは納得しないぞ(^^;
E-mail