pinエンドレス家族間無料
(佐藤家の日常から74)
yoko
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あきからガイに、「誕生日おめでとう!1泊お食事券付きツアー」への招待があった。



今年4月に就職。晴れて社会人となった、あきからのプレゼントでもあり、ガイもありがたく招待を受けることに。
11月下旬、仙台市内の居酒屋で乾杯。夜は、あきの部屋で一緒にお休み…。サシでたっぷりと、「どーだれ、こーだれ」と仲良くおしゃべりしたり、そして仲良くけんかしたに違いない。

あっ、それとツアーにはもちろん、毎度おなじみのオプションが付いていたのは言うまでもない。

それは…
「あきお嬢様のお部屋をご一緒にきれいにするお楽しみイベント」#1.

世間では「お掃除当番」とも言うらしい。

それだけではない。さらに第2弾オプションも、もれなく付いていた。
「あきお嬢様のお召し物をご一緒にきれいにするお楽しみイベント」

浮き世では「洗濯係」とも称するらしい。

食事会も当初は
「私がお母さんの誕生日祝って、手料理ごちそうするね!」
と、あきが張り切っていたが、ガイは断固拒否。
「あきお嬢様とご一緒に宴の後片付けをするお楽しみイベント」の第3弾オプションまでは、さすがのガイも固辞。

なんせ、あきが張り切って調理した後の佐藤家の台所は、戦場のごときありようで、ガイでさえ「白旗」を上げるのだから。
手料理はありがたいが、後片付けはありがた迷惑なのは察するに余りある。

しかしだ。あきがご厄介になっている仙台の会社。ど新人としての迷惑のみならず、変わらぬ暴走天然「すっとこどっこい」キャラで、周りに多大な迷惑を掛けているのは想像に難くない。
あきを採用していただいた会社の関係者には、大変心苦しく思っております。ではありますが、これも何かの巡り合わせとあきらめて頂いて、ぜひ、あきをよろしくお願いします。
と、一応、親らしくお願いしておこうっと。


閑話休題。

社会人となり8か月が過ぎた、あき。山のような失敗を積み上げながらも、どうにか、少しずつ仕事に慣れてきたようだ。
それはあきから、ガイへの電話の内容で分かる。当初は、落ち込んだり、反省しきりの電話も多かったようだ。今では、失敗しても、それを前向きに生かしていこう ーー という姿勢が感じられる。
同じ会社の携帯電話同士の通話が無料になったこともあり、毎日のように、あきからガイに電話がある。
部屋に着いて、一息つくと、ガイに電話する。あきは、テーブルの上に携帯を置き、オンフック状態で、いろいろな作業をしながら、口からはマシンガントークが炸裂する。

男親からすれば、よくそこまで話の種があるもんだと思うが、あきの口からは次から次へと言葉が出てくる。
あんまり長電話だとガイも、「明日早いから…」「今からお風呂入るから…」「今、テレビで映画見ているから…」と肩すかしや、うっちゃりを連発して、切り上げようとするのだが、土俵際まで追い詰められても、あきはここから粘る。
「ところで」「あっ、これ聞いた?」「そう言えばね」と、するりと体を入れ替えると、元々話し好きなガイのまわしをグッとつかみ直し、土俵の中央に引き戻す。
さらにはこんな手も繰り出す。
「…」
「あき? どうしたの?」
出た! 沈黙という名の、上手出し投げ! 大丈夫か? どうなるガイ!

というようなことが何回か続き、やっと「水入り」。次の日の夜へと、勝負は続くのであった。めでたし、めでたし。

…なのだが、取組の何番か(完全に相撲モード)に一番は、ガイの「ちゃんと栄養のバランス考えてんの?」#2.「おしゃれは大事だけど、服にあんまりお金かけちゃだめだかんね」という、お得意の「けたぐり」ならぬ余計なお世話が出て、最後は「佐藤家の日常」名物、ノーガードの張り手合戦へとなる場合も多い。まあガイ曰く「母親の愛情」という名の「勇み足」ではあるのだけれどもね。
ただあんまりしつこくガイが言うと、あきは「ブチッ」と電話をいきなり切るという、「はたき込み」で抗議することある。しかしガイは「電話『ブチッ』と切られた。ふふふ…」とあまり懲りてない。本人は「相撲では負けたが、勝負では勝った」と思っているらしい。

でも「水入り」後であろうとも、両者土俵下に転げ落ちる「同体と見て取り直し」であろうとも、次の夜はまた、あきから「あっ、お母さん。うん、今玄関…」「あの今日ね…」「それでね…」「ところがさ…」「聞いてる?」「そうそう、この間の、あの…」「そうそう!これ話して、いいのかなあ…」「聞いてるの?」「相談なんだけど…」「あっ!思い出した!」「…」「明日ね…」「じゃあね!…言い忘れた…」
と今夜もエンドレス・トゥナイト!

でもあきちゃんにお願い。映画が佳境に入った、まさにその時に電話を掛けて来る、その素晴らしいタイミングの良さだけは勘弁な!


( のりお )

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あずみによる脚註
あきちゃんも、頑張ってるようでめでたい。ゆーたが東京で寂しい佐藤家だが、ケータイの家族割引というありがたい追い風があったのですね。
1.) 「あきお嬢様のお部屋をお掃除するお楽しみイベント」:
あきちゃんのお部屋といえば佐藤家の発掘問題▼あきの巣穴▼など参照してね。
2.) 「ちゃんと栄養のバランス考えてんの?」:
ガイお母さんは、あきちゃんがやせすぎていると思ってるんだよね。ナタの連打的親心▼を参照のこと。




あきちゃんが仙台で就職するのに合わせて、家族間無料にするなんて、docomoもやるもんだねえ。